今あの髪型を見るとげんなりするのは

1月21日、近藤ようこ 著『仮想恋愛』(青林堂工藝舎)を読む。お前は青林堂がらみの漫画しか読まないのかと言われると返す言葉もない。前回この場に女優の川栄李奈を某局のアナと間違えて局アナがコンビニの広告に出てもいいのかなどと誰にからんでるかもわ…

お前は何を現代詩的と思っているのか

1月23日、『ひらく夢などあるじゃなし 三上寛 怨歌集』(URC)を聴く。本作は歌手、三上寛が72年にURCレコードから発表した作品集。三上寛が一躍その名を知られるようになるのは71年のフォーク・ジャンボリー出演からだとなぎら健壱の『日本フォーク大全』に…

本作に登場する東京名所も正しく68年

1月25日、『泣いてたまるか 東京流れ者』をDVDで観る。『泣いてたまるか』はTBS系で66年から68年まで放映された「根性ドラマ」と当時呼ばれた作品。渥美清演じる主人公が活躍する一話完結物で本作『東京流れ者』の脚本は内田栄一。『妹』、『バージン・ブル…

この人が恩人ならあの人は神様という

1月27日、橋本治 著『ちゃんと話すための敬語の本』(ちくまプリマ―新書)を読む。本書は作家の橋本治が05年に「敬語とはいったい何か」をひもといたもの。昭和が終わる頃、皇室関連の特別番組で森口博子が変な敬語を使わないか視聴者はヒヤヒヤした。が、何…

それこそおもしろまじめな役者ぶり

11月20日、『赤塚不二夫のギャグ・ポルノ 気分を出してもう一度』(79年 日活)をDVDで観る。監督、山本晋也。本作は漫画家、赤塚不二夫が原案を立てプロデューサーと脚本を兼ねる高平哲郎ともちろん山本晋也監督と関係者一同が飲んで騒いで生まれたパー…

渡世の義理と経営者の孤独は同意語か

11月19日、はしだのりひことシューベルツの『未完成』(東芝音楽工業)を聴く。本作がレコーディングされたのは68年11月から69年4月の間。私はシューベルツは70年代初めに活躍したバンドだと思っていたが68年のフォークルの解散時には既に準備していたそう。…

要は踊らされるなよということだが

11月17日、森達也 著『たったひとつの「真実」なんてない』(ちくまプリマ―新書)を読む。本書は映画監督、作家で大学教授でもある著者が2014年に書き下ろしたコラム集。著者がこれまで発表したコラムはいずれも一貫して「情報は公正でもないし中立でもない…

「東陽片岡」という筆名は夢のお告げ

11月14日、東陽片岡 著『ステテコ行進曲』(青林工藝舎)を読む。本作は漫画家、東陽片岡が06年から08年まで『週刊漫画サンデー』に連載していた作品を単行本化したもの。冒頭の『ワタシはそれが気になって仕方がなかったのまき』で作者は自身がオナニーやウ…

勝新太郎と同じ65才で死去した著者の

7月30日、宮沢章夫 著『長くなるのでまたにする。』(幻冬舎文庫)を読む。本書は劇作家の宮沢章夫が15年に発表したエッセイ集を文庫化したもの。著者は昨年の9月に亡くなったが本書は追悼企画ではなくトミヤマユキコの解説も著者の精力的な仕事ぶりを身近で…

見たっていい。夢ぐらい見たって。

7月29日、『午前中の時間割り』(72年 ATG)をDVDで観る。監督、羽仁進。“『初恋・地獄篇』の鬼才、羽仁進 監督が放つ、珠玉の青春映画” である本作は一般向きには失敗作として知られる。本作のようなATG作品を公民館などで無料で観られる上映会が80年代後半…

そもそも俺の家だということなのか

7月27日、南正人の『南正人ファースト』(73年 ベルウッド)を聴く。本作は南正人が八王子市美山町の自宅にキャラメル・ママを招いて録音された元祖宅録盤。現在、古民家をリフォームしてカフェや洋品店にしたりするセンスのはしりかも。そんなセンスの店のB…

一度は自分を受け入れたはずの世間に

7月25日、丸尾末広 著『アン・ガラ』(KADOKAWA)を読む。本書は漫画家、丸尾末広が『月刊コミックビーム』に21年から23年まで発表した連作の単行本。60年代後半の東京で暮らす十九歳のミゲルとサチコ。ミゲルは漫画家を目指して『ガロ』に原稿を持ち込む。…

昔はそんなものだったという史実は

5月16日、橋本治 著『その未来はどうなの?』(集英社新書)を読む。本書は作家、橋本治が2010年の秋に病に倒れながら「自分の体をなんとかするのは自分だけだ」という信念から書き続けた渾身のエッセイ。冒頭の『テレビの未来はどうなの?』の章で「テレビ…

今年もやむにやまれず歌ってしまった

4月29日、狭山稲荷山公園にてハイドパーク・ミュージック・フェスティバル 2023を観る。06年以来17年ぶりに再開されたフェスの1日目は天気も入りも上々。正午過ぎに登場したサニーデイ・サービスはいい時間に思いきりやれている様子。新メンバーの大工原…

嫌われると承知の上の炉悪趣味が

4月19日、根本敬 作・画『生きる 2010』(青林堂工藝舎)を読む。本書は漫画家、根本敬が2010年に描き下ろした『生きる』と同シリーズを80年代に『平凡パンチ』に発表した旧作を大宅壮一文庫で発掘し「とにかく全部」収録したもの。水木しげるが貸本時代の…

またぞろ振り出しに戻れたのは実に

4月12日、シネマート新宿にて『GOLDFISH』を観る。監督、藤沼伸一。本作はアナーキーのギタリスト、藤沼伸一がバンドの全盛期から転落と再出発までをみずから描いたもの。メンバーのマリこと逸見泰成は17年に自死したが詳細は公表されていない。身内がそっと…

本作はいつ観てもそんな良い映画

1月29日、『TATOO[刺青]あり』(82年ATG)をDVDで観る。監督、高橋伴明。本作は79年に起きた三菱銀行人質事件を素材にした犯罪ドラマ。80年代初めまで凶悪事件を脚色した実録物とも呼べる劇映画は量産されたが。事件の周辺にいる人々に配慮して今ではあまり…

世が世なら串田アキラみたいになって

1月25日、山口富士夫の『Tumbling Down』(17年 Good Lovin)を聴く。本作は84年、渋谷屋根裏での山口富士夫率いるタンブリングダウンの演奏を恐らく家庭用ラジカセで録音したもの。音質は劣悪である。山口富士夫の楽曲はガレージパンクやノイズアバンギャ…

著者もナンシー関も時期を同じくして

1月24日、中島梓 著『夢見る頃を過ぎても』(ちくま文庫)を読む。本書は評論家、中島梓が94年から95年まで『海燕』誌上に発表した文芸時評を収録したもの。序文に―その昔十年前に日本読書新聞というところで「同人雑誌評」を一年間やり―と記されてい…

下手なエコノミストより格段に速く

1月22日、東洋片岡 著『ワシらにも愛をくだせぇ~!!』(青林工藝舎)を読む。本作は漫画家、東洋片岡が『アックス』誌を中心に08年から18年までに発表した作品を収録したもの。東洋片岡の名前はなんと『漫画家、アニメ作家人名事典』に載っていた。「東京…

酒も煙草も知らない育ち盛りの味覚と

11月2日、西村賢太 著『瓦礫の死角』(講談社文庫)を読む。今年2月に急死した著者の追悼企画のひとつ。表題作の『瓦礫の死角』では中卒の身で一人暮らしを始めるもすぐに職も家も失い母親のアパートに転がり込む主人公、北町貫太のひきこもりの暴君振りが酷…

ニュース映画の決定的瞬間の様な生な

10月30日、『ションベン・ライダー』(83年キティ・フィルム)をDVDで観る。監督 相米慎二。83年の5月にかつて相米が助監督を務めた寺山修司が亡くなっているが本作の意図的な不格好さは寺山演劇に通じるものが。三時間半の作品を二時間にカットして話の繋が…

この路線にもっとこだわっていれば

10月28日、チャクラの『チャクラ+5』(ウルトラ・ヴァイヴ)を聴く。本作はチャクラが80年に発表したデビューアルバム『チャクラ』に未発表ライブ音源を9曲付けて収録したもの。ジャケ写に写るメンバーの衣装は人民服をアレンジした奇妙な恰好でこれはプロ…

改めて押入れの奥に寝かせておきたい

10月27日、みうらじゅん 著『改訂版 ボクとカエルと校庭で』(青林堂工藝舎)を読む。本書は漫画家、みうらじゅんが87年から88年まで『ガロ』を中心に発表してきた作品を収録したもの。主人公のカエルのマイケルはのちにローリング・ストーンズの来日Tシャツ…

80年代の若者版『男はつらいよ』とも

6月15日、福谷たかし 著『レジェンド どくだみ荘伝説』(青林工藝舎)を読む。本作は漫画家、福谷たかしが79年から94年まで『週刊漫画Times』に連載した大ヒット作品『独身アパートどくだみ荘』の再編集版。『どくだみ荘』は主人公、堀ヨシオが日雇い仕…

芸術家に成ろうとも若い物は苦いのだ

6月22日、カルメン・マキ『アダムとイヴ』(69年 Sony Music Records)を聴く。惹句には「現代のイヴ、カルメン・マキが歌う愛の孤独」「4人の詩人と8人の作曲家による10の歌」とある。69年2月に『時には母のない子のように』がオリコン…

ならば建前なしに何が残るかという

6月19日、『毛の生えた拳銃』(68年 若松プロダクション)をDVDで観る。監督 大和屋竺。本作は『ルパン三世』の脚本家として知られる大和屋竺が若松プロの三百万映画シリーズと呼ばれた低予算映画のメガホンを取った監督第三作。本作がきっかけで『ルパン三…

体制側でも反体制でも好きなものは

6月16日、岡田晋吉 著『青春ドラマ夢伝説』(ちくま文庫)を読む。本書は日本テレビの『青春とはなんだ』『太陽にほえろ!』『俺たちの旅』などの人気ドラマを手がけたプロデューサーの回想録。青春ドラマの生みの親である著者が語りかけたいのは数々のヒッ…

あとは日常のたわいない戯事なのだ

4月3日、高橋ヨシキ 著『暗黒ディズニー入門』を読む。本書はアートディレクターの高橋ヨシキがディズニー作品の光と闇について自身は「悪魔主義者」に武装した上で臆することなく解説したもの。ディズニー作品を宗教や人種差別の面から裏読みした批判が集…

文句があるなら本作の中の巻上公一に

3月28日、『風の歌を聴け』(81年ATG)を観る。監督、大森一樹。大森一樹は村上春樹の中学の後輩で実家も隣組であることから映画化権を素早く獲得できたそうだが。村上春樹の初期の短編小説を勝手に映画化したものは80年代半ばの自主映画界には数知れずある…