わが青春の一本とでも呼びたい映画を  

8月19日、『青春デンデケデケデケ』(92年東映)をDVDで観る。監督、大林宣彦。本作をビデオで観返すのは初めて。わが青春の一本とでも呼びたい映画を中年過ぎて観返すと制作側のお説教やごまかしに気付いて嫌になるというが。60年代末の田舎町でエレキバ…

旗揚げ時のあふれくる本当の願いは

8月10日、鴻上尚史 著『鴻上尚史のごあいさつ 1981-2019』(ちくま文庫)を読む。本書は劇作家の鴻上尚史がこれまで手がけた自身演出による舞台にて配布してきた手書きの近況報告「ごあいさつ」を全て収録して新たに「解説」を加えたもの。81年の旗揚げ公演…

負けじと食らいつく花の応援団のような

8月9日、筋肉少女帯『仏陀L』(88年 トイズファクトリー)を聴く。本作は大槻ケンヂ率いる筋肉少女帯のメジャーデビューアルバム。ジャケ写にはオーケンとキーボード担当の三柴江戸蔵のみが和服姿の老人会の姿様に囲まれて写っている。残りのメンバーは撮影…

神の視点とは云わず人としてどこまで

8月5日、高橋留美子 著『高橋留美子傑作集 魔女とディナー』(小学館)を読む。本作は著者が12年から17年まで『ビッグコミックオリジナル』誌上に発表した読切漫画6篇を収録したもの。表題作『魔女とディナー』はエステ企業の女社長の呪術に引っかかり食べ…

が、このもどかしさこそが渚ようこ

4月24日、渚ようこ『ベスト・ヒット12デラックス』(日本コロムビア)を聴く。本作は一昨年急死した渚ようこが90年代後半コロムビアに残した音源を追悼盤としてまとめたもの。数多のGSフォロワーの中で渚ようこだけが持つどこか常軌を逸した異常な執着は今…

著者のカラオケ姿もふんだんに登場

4月3日、東陽片岡 著『レッツゴー‼ おスナック』(青林工藝舎)を読む。本書は漫画家、東陽片岡が04年から10年までに発表したスナックがらみの漫画に自身のカラオケ講座と美人ママインタビューなどのコラム記事も併せて収録したもの。著者のカラオケ姿もふん…

80年代初め、まだ自前のメイクで

4月2日、忌野清志郎 著『ロックで独立する方法』(新潮文庫)を読む。本書は忌野清志郎が音楽で独立したい若者に向けて語り下ろしたレクチャー本である。が、09年に清志郎が亡くなるまでに単行本化は叶わなかったもの。構成はRCサクセションの全盛期のタレ…

しかし映画とは本来芝居を見せるもの

3月18日、テアトル新宿にて『星屑の町』(20年「星屑の町」フィルムパートナーズ)を観る。監督、杉山泰一。本作は94年に劇作家、演出家の水谷龍二とラサール石井、小宮孝泰による「星屑の会」が上演して以来25年に渡る人気シリーズとなった舞台劇を映画化し…

インフレ期、バブル期、格差期と

12月20日、村上龍 著『オールド・テロリスト』(文藝春秋)を読む。本作の概要は民間人が国家レベルのテロに関わるという点において『コインロッカー・ベイビーズ』や『愛と幻想のファシズム』などの過去作と重なる。インフレ期、バブル期、格差期と時代を経…

大きな声では言えないがこういうのも

12月1日、勝又進 著『赤い雪』(青林工藝社)を読む。本書は漫画家、勝又進が78年から80年までに『漫画ゴラク』などに発表した作品を05年にまとめた既刊の普及版。帯文には“つげ義春、水木しげるが絶賛し、2006年度第35回日本漫画家協会大賞を受賞”と紹介さ…

わざとらしくフライングさせることで

11月20日、新宿ピカデリーにて『iアイ新聞記者ドキュメント』(19年スターサンズ)を観る。監督、森達也。本作は東京新聞社会部記者、望月衣塑子の取材現場を密着取材した報道ドキュメント。望月記者のスーパーウーマン的な活躍ぶりにカメラは息も絶え絶え…

過去20年のハイライトシーンの再演

9月28日、日比谷野外音楽堂にて、eastern youth を観る。晴天に恵まれた客席は満杯。「うだつのあがらないバンドを20年も続けてきましたが、かき集めればいるものですな」と感心する吉野寿の健康状態も悪くないよう。過去20年のハイライトシーンの再演といっ…

私には頼もしいその変わらなさが

9月21日、eastern youth『時計台の鐘』(NBCユニバーサル・エンターテイメント)を聴く。本作はアニメ『ゴールデンカムイ』挿入歌のタイトル曲を含む全3曲のシングル。『ゴールデンカムイ』とはどんな作品かとコミックス第一巻を読んでみる。…

フランチャイズに入れなかったので

9月17日、『愛のお荷物』(55年日活)をDVDで観る。監督、川島雄三。本作はフランス演劇『あかんぼ頌』を映画化するはずが権利がとれず内容を改変したもの。フランチャイズに入れなかったので堂々といただいてより面白い作品をと狙った感。人口抑制を主張す…

私を『浅川マキの世界』にエスコート

9月14日、きたやまおさむ 前田重治 著『良い加減に生きる』(講談社現代新書)を読む。本書は精神科医であり作詞家であるきたやまおさむが先輩格の精神科医である前田重治と過去の作品について語ったもの。『あの素晴らしい愛をもう一度』や『戦争を知らない…

作画も台詞も全て手書きゆえに

9月12日、東陽片岡 著『コモエスタうすらバカ』(青林工藝舎)を読む。本書は『プレイコミックプレイコミック』誌に08年から11年までに掲載された作品を収めたもの。毎回四頁一話完結で背景も台詞も全て手書きというスタイル。登場するのはいずれも時代から…

そうしたフラストもいずれもう一皮

6月5日、ゴキブリコンビナート『粘膜ひくひくゲルディスコ』(93年いぬん堂)を聴く。以前この場で映画『盲獣vs.一寸法師』(01年石井プロダクション)について主演男優は劇団ゴキブリコンビナート主宰のDrエクアドルなどと紹介したがこれは誤り。メイキング…

が、渋谷生まれの著者は区立原宿中学

5月31日、塚本晋也 著『冒険監督』(ぱる出版)を読む。本書は映画監督、塚本晋也がこれまでの活動歴を初めて8ミリカメラを回した14歳の頃から振り返る自叙伝。80年代の終わり、本書にも登場する石井聰互や松井良彦や利重剛など期待の新鋭監督の一人として…

血圧で人となりを探ろうとするのは

5月19日、『ときめきに死す』(84年にっかつ)をDVDで観る。監督、森田芳光。とある海辺の別荘地でひと夏の共同生活を送る男女。沢田研二演じる青年テロリスト、杉浦直樹演じるお目付け役の医師、樋口可南子演じるコンパニオンの3人を操る司令塔はパソコ…

そんな投げやりなラストも時代の気分

5月15日、ジョージ秋山 著『ドストエフスキーの犬』(青林工藝社)を読む。本書は漫画家、ジョージ秋山が70年から79年まで発表してきた作品を8編収録したもの。表題作の『ドストエフスキーの犬』は79年作品。冒頭には夕日に向かって家路を急ぐ主人公の淳少年…

今ここですべてを捨てる快感に対して

2月18日、サレンダー橋本 著『働かざる者たち』(小学館)を読む。本作はエブリスタ『コココミ』に17年5月から18年8月まで掲載された作品を単行本化したもの。同時期に『明日クビになりそう』(秋田書店)という同じサラリーマンものもリリースされた著者は“…

江戸末期、時代の節目に一攫千金を

12月21日、渋谷ユーロスペースにて、『斬、』(海獣シアター)を観る。監督、塚本晋也。国際俳優としても活躍する塚本晋也は今や「藤岡弘、」のように国内外に豊富な人脈と微妙なしがらみを抱えているのだろうか。本作は前作『野火』で戦争映画に初挑戦した…

らしくもないことはやらない姿勢を

12月20日、EXシアター六本木にて『岡林信康デビュー50周年コンサート 東京公演』を観る。予定されていた山下洋輔スペシャル・カルテットの出演は山下洋輔の負傷欠場により中止に。「どうも沢田研二です。今日は満員なんでやる気になってます」と登場するやい…

観客層は評判通りおじさんと女のコが

12月9日、昭和女子大学にて大森靖子の『クソカワ PARTY』TOURを観たがもう二ヶ月前のことなのでアルバム『絶対少女』を聴きながら印象に残っていることなどを記す。観客層は評判通りおじさんと女のコが大半。おばさんと男のコが寄り付かない実情は読み取れな…

ライブにはそれなりの覚悟を持って

11月26日、岡林信康『森羅十二象』(ディスクユニオン)を聴く。本作は68年に『山谷ブルース』でデビューした岡林信康の50周年記念アルバム。全12曲は過去作のセルフカバーを多彩なゲストと共演したもの。京都フィルハーモニー室内合奏団、坂上幸之助、矢野…

只、一端預かった役者は搾れるだけ搾る

11月16日、鴻上尚史 著『鴻上尚史の俳優入門』(講談社文庫)を読む。本書は劇作家で演出家である著者が中高生向きに俳優という職業についてレクチャーしたもの。高校演劇コンクールの審査員として青森に出向いた著者が帰りの東北新幹線の中でコンクール参加…

それでもアル仙にしか描けないものは

11月7日、『笑いのカイブツ』(秋田書店)を読む。本書は「元伝説のハガキ職人」のツチヤタカユキの私小説を史群アル仙が漫画化したもの。ツチヤには対人恐怖症の傾向がありアル仙にははっきり病名の付いた精神障害がある。この両者をブッキングする制作者…

あれは女優魂というよりガッツである

11月2日、テアトル新宿にて『止められるか、俺たちを』を観る。監督、白石和彌。60年代後半の新宿でフーテン少女から若松プロダクションの助監督となりやがて国内初の女性ピンク映画監督となる筈だった吉積めぐみの23年の生涯を描いた本作。ではあるが演じる…

大人のヒデキを振り向かせたいのは

9月7日、西城秀樹『ゴールデンベストシングルコレクション』(SONY MUSIC)を聴く。本作は72年『恋する季節』でデビューしたヒデキを83年『ギャランドゥ』まで収めた「懐刻盤」。本作のヒデキはデビューから4枚目までの青春歌謡期、『情熱の嵐』か…

本作が刺激になり欲も出てきたのか

8月31日、原作 阿久悠 画 上村一夫『人喰い』(双葉社)を読む。本作は71年1月から4月までWEEKLY漫画アクションに連載されたコミックスを初めて単行本化したもの。70年代初め、「高度経済成長の犠牲となった故郷を棄て人を喰い漁り芸能界の頂点にのぼ…