エレキギター1本で念仏を唱える様な

3月26日、宮沢正一『人中間』(いぬん堂)を聴く。82年にスマート・ルッキンなる自主レーベルより発表された宮沢正一のソロアルバム。プロデュースは遠藤ミチロウ。宮沢正一は当初ミチロウと同じく生ギター1本で歌うソロ歌手だったが後にバンド志向になりラ…

便所の落書きに想像力の泉を見るよう

3月20日、辰巳ヨシヒロ 著『[増補版]TATSUMI』(青林工藝舎)を読む。本作は漫画家、辰巳ヨシヒロが70年から79年までに発表した短編漫画、9作品を収録したもので5作品は11年に海外でアニメ映画化された。著者は50年代の貸本漫画ブームからキャリアを…

本書はその花束の10年分の押し花

1月15日、宮沢章夫 著『時間のかかる読書』(河出文庫)を読む。本書は劇作家の宮沢章夫が『機械』という1930年に横光利一が発表した小説を11年以上かけて深読みし続けた読書レポート。雑誌『一冊の本』(朝日新聞出版)に長期連載されたもの。『機械』とい…

今聴き返してどこか問題がある感じは

1月12日、『唐十郎 四角いジャングルで唄う』(キングレコード)を聴く。本作は73年2月8日に後楽園ホールにて行われた状況劇場のリサイタルをCD化したもの。同年レコード化された本作の復刻はあり得ないと言われていたが。今聴き返してどこか問題がある感じ…

冗談の中に本気が含まれていいた?! 

1月9日、『ファイヤーマン 第12話 地球はロボットの墓場』(73年 円谷プロ)をDVDで観る。監督、大木淳。脚本、岸田森。岸田森は本作でSAF隊員、水島役も演じている。ゴールデン枠のドラマを一人の俳優が自作自演する機会は当時も今も滅多になく、勝新太郎の…

そして私もまた読後、暫くの間は虚脱

12月21日、大山海 著『奈良へ』(ハイド社)を読む。15年に第17回アックスマンが新人賞に入選した漫画家、大山海の2冊目の単行本である本作の帯文には「色即是空の大ヒット!3刷出来!!」とある。デビュー前から注目していたという作家、町田康の解説にも「こ…

その配慮は「貧しさ」から生じていた

11月1日、『顔役』(71年 東宝)をDVDで観る。監督、勝新太郎。本作は勝新太郎が 大映倒産直前に残されたスタッフごと他者と提携する形で縦横無尽に撮った意欲作。以前に劇場で観た時の印象は勝新作品の中でもとびきり面白いというものだったが。どこがどう…

 寺山をおたく文化の始祖と見る向きも

10月30日、寺山修司 著 『ぼくが戦争に行くとき』(中公文庫)を読む。本書は69年に刊行された寺山のエッセイ集だが没後何冊も世に出た再編集本に収録された文章も多い。私が初めて読むのは第二章『キャンパスでの演説』における68年の関西学院大学での演説…

あの健気なコール&レスポンスは

10月25日、『ミッキー吉野グループ 1974 ワンステップ・フェスティバル』(アイドルジャパンレコード)を聴く。本作は74年8月福島県郡山での日本初の野外ロックイベント、3日目のトリに出演したミッキー吉野グループの演奏を収録したもの。野外フェスの…

本作は表舞台に残された置き土産の様

10月20日、松本正彦 著『たばこ屋の娘』(青林工藝舎)を読む。本作は漫画家、松本正彦が70年代前半に『ハイドコミック』や『土曜漫画』に発表した短編集。松本正彦は50年代に病死している。本作は表舞台に残された置き土産の様な小品だが70年代に郷愁を持つ…

オカルトの本質も知らずに興味本位に

8月10日、丸尾末広 著『犬神博士』(秋田書店)を読む。本作は漫画家、丸尾末広が91年から94年までヤングチャンピオン誌上に発表した作品を単行本化したもの。主人公の犬神博士は呪術師であり呪術にまつわる怪事件の現場に風のように登場する。この物語の案…

中島らものひと夏の経験に乾杯

7月22日、中島らも 著『頭の中がカユいんだ』(集英社文庫)を読む。本書は作家の中島らもが広告代理店に勤務しながらコラムニストとして東京進出し始めた頃の「ノン・ノンフィクション」と銘打った処女作。ノンフィクションなんて体裁のいいもんじゃないと…

データの勝利ではなく自身の直感で

7月20日、『メイン・テーマ』(84年 角川)をDVDで観る。監督、森田芳光。81年に『の・ようなもの』で注目され、83年に『家族ゲーム』で大ブレイクした森田監督の「配収35億」を目標とした大ファール作。であるが既に森田ブームの真っ只中でもあり人気ド…

近年のジャックス市場は売り傾向に

7月7日、『ジャックス LIVE 15 JUN 1969』を聴く。69年のラジオ番組『みんなで歌おうフォークフォーク』に出演したジャックスのライブ音源。KBS京都の名物ディレクター、川村輝夫の自宅に眠っていた貴重な音源の初CD化。新宿ディスクユニオンの店頭で「8月に…

酒豪で旅好きのフォーク歌手といえば

4月29日、友川カズキ 著『一人盆踊り』(ちくま文庫)を読む。本書はフォーク歌手の友川カズキが70年代半ばより書き残してきた身辺雑記に語り下ろしインタビューも併せて再構成した初の文庫本。50年生まれの著者は近年にも何作目かのドキュメント映画が公開…

人民服は入手困難でもハイソックスを

4月24日、『P-TRICK PLAN』P-MODEL(ワーナーミュージック・ジャパン・イヤーズ)を聴く。本作はP-MODELが79年に発表したデビューアルバムから80年のセカンド、81年のサードと計3枚から「コンセプトアルバムではなく名曲集といった性質」で選曲されたベスト盤…

自分は稀なるこの商品をいち早く購入し

4月17日、根本敬 著『怪人無礼講ララバイ』(青林堂工藝舎)を読む。本作は88年の『怪人無礼講』をはじめ『サイドウ一代』『好色無頼』『タケオの世界』の4篇を90年に単行本化したものの改訂版。表題作の『怪人無礼講』は『QA』誌に連載時から低俗だと非難…

時代設定は大凡昭和初期、大凡日本の

4月7日、テアトル新宿にて『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』(20年 ビターズ・エンド)を観る。監督、池田暁。本作は海外の映画祭で評価の高い池田監督の初の一般劇場作品。時代設定は大凡昭和初期、大凡日本の内陸部に棲む兵隊の町というアバウトなもの。早朝…

その理由は若者にはまだ「自分」が

2月14日、橋本治 著『いつまでも若いと思うなよ』(新潮新書)を読む。本書は作家の橋本治が2014年に『新潮45』に連載していた老いと病についてのエッセイ集。第三章「自分」という名の項にて若い頃は自慢ではなく何を着ても似合ったと語る著者だが。「フ…

『ルパン三世』よりずっと児童向きな

2月3日『ガンバの冒険 Vol.3(最後の戦い 大うずまき)』(ぴあ株式会社)を観る。75年 東京ムービー作品。脚本は大和屋竺、音楽は山下毅雄と『ルパン三世』と同じコンビのが本作を私はオンタイムで観ていたが最終回は観ていない。『ルパン三世』よりずっと…

すかんちにとってはささやかながらの

2月10日『すかんち CD&DVD THE BEST 軌跡の詩』(05年 ソニー・ミュージック・エンタテインメント)を聴く。本作はすかんちの90年のデビューから96年の解散までに発表した作品から再編したもの。映像作品を含めたこのBESTシリーズは三社共…

オツナヒキと呼ばれる綱引き祭の綱を

2月13日、諸星大二郎 著『雨の日はお化けがいるから』(小学館)を読む。本作は漫画家、諸星大二郎が06年から17年までビッグコミック誌を中心に描いた作品をまとめたもの。巻頭カラーの『闇綱祭り』の舞台はとある地方都市。主人公の少年リューは町の神社で…

現在その流れにあるのは誰だろう

11月18日、梅崎春生 著『怠惰の美徳』(中公文庫)を読む。本書は作家の梅崎春生が昭和17年から昭和41年までに新聞や文芸誌に発表した雑文と小説を再編したもの。その中の『聴診器』は昭和37年に『新潮』に書いた身辺記。小学生になる著者の息子が学級新聞の…

その心の原風景はいつもとちがって

11月5日、赤塚不二夫 著『天才バカボン㉑』(竹書房文庫)を読む。本作は『週刊少年マガジン』に76年5月から12月まで掲載されたもの。コミック版『天才バカボン』の最初の最終回が読める。連載自体は67年4月に開始しており実に10年近くも週刊ペースでギャグ…

わが青春の一本とでも呼びたい映画を  

8月19日、『青春デンデケデケデケ』(92年東映)をDVDで観る。監督、大林宣彦。本作をビデオで観返すのは初めて。わが青春の一本とでも呼びたい映画を中年過ぎて観返すと制作側のお説教やごまかしに気付いて嫌になるというが。60年代末の田舎町でエレキバ…

旗揚げ時のあふれくる本当の願いは

8月10日、鴻上尚史 著『鴻上尚史のごあいさつ 1981-2019』(ちくま文庫)を読む。本書は劇作家の鴻上尚史がこれまで手がけた自身演出による舞台にて配布してきた手書きの近況報告「ごあいさつ」を全て収録して新たに「解説」を加えたもの。81年の旗揚げ公演…

負けじと食らいつく花の応援団のような

8月9日、筋肉少女帯『仏陀L』(88年 トイズファクトリー)を聴く。本作は大槻ケンヂ率いる筋肉少女帯のメジャーデビューアルバム。ジャケ写にはオーケンとキーボード担当の三柴江戸蔵のみが和服姿の老人会の姿様に囲まれて写っている。残りのメンバーは撮影…

神の視点とは云わず人としてどこまで

8月5日、高橋留美子 著『高橋留美子傑作集 魔女とディナー』(小学館)を読む。本作は著者が12年から17年まで『ビッグコミックオリジナル』誌上に発表した読切漫画6篇を収録したもの。表題作『魔女とディナー』はエステ企業の女社長の呪術に引っかかり食べ…

が、このもどかしさこそが渚ようこ

4月24日、渚ようこ『ベスト・ヒット12デラックス』(日本コロムビア)を聴く。本作は一昨年急死した渚ようこが90年代後半コロムビアに残した音源を追悼盤としてまとめたもの。数多のGSフォロワーの中で渚ようこだけが持つどこか常軌を逸した異常な執着は今…

著者のカラオケ姿もふんだんに登場

4月3日、東陽片岡 著『レッツゴー‼ おスナック』(青林工藝舎)を読む。本書は漫画家、東陽片岡が04年から10年までに発表したスナックがらみの漫画に自身のカラオケ講座と美人ママインタビューなどのコラム記事も併せて収録したもの。著者のカラオケ姿もふん…