80年代初め、まだ自前のメイクで

4月2日、忌野清志郎 著『ロックで独立する方法』(新潮文庫)を読む。本書は忌野清志郎が音楽で独立したい若者に向けて語り下ろしたレクチャー本である。が、09年に清志郎が亡くなるまでに単行本化は叶わなかったもの。構成はRCサクセションの全盛期のタレ…

しかし映画とは本来芝居を見せるもの

3月18日、テアトル新宿にて『星屑の町』(20年「星屑の町」フィルムパートナーズ)を観る。監督、杉山泰一。本作は94年に劇作家、演出家の水谷龍二とラサール石井、小宮孝泰による「星屑の会」が上演して以来25年に渡る人気シリーズとなった舞台劇を映画化し…

インフレ期、バブル期、格差期と

12月20日、村上龍 著『オールド・テロリスト』(文藝春秋)を読む。本作の概要は民間人が国家レベルのテロに関わるという点において『コインロッカー・ベイビーズ』や『愛と幻想のファシズム』などの過去作と重なる。インフレ期、バブル期、格差期と時代を経…

大きな声では言えないがこういうのも

12月1日、勝又進 著『赤い雪』(青林工藝社)を読む。本書は漫画家、勝又進が78年から80年までに『漫画ゴラク』などに発表した作品を05年にまとめた既刊の普及版。帯文には“つげ義春、水木しげるが絶賛し、2006年度第35回日本漫画家協会大賞を受賞”と紹介さ…

わざとらしくフライングさせることで

11月20日、新宿ピカデリーにて『iアイ新聞記者ドキュメント』(19年スターサンズ)を観る。監督、森達也。本作は東京新聞社会部記者、望月衣塑子の取材現場を密着取材した報道ドキュメント。望月記者のスーパーウーマン的な活躍ぶりにカメラは息も絶え絶え…

過去20年のハイライトシーンの再演

9月28日、日比谷野外音楽堂にて、eastern youth を観る。晴天に恵まれた客席は満杯。「うだつのあがらないバンドを20年も続けてきましたが、かき集めればいるものですな」と感心する吉野寿の健康状態も悪くないよう。過去20年のハイライトシーンの再演といっ…

私には頼もしいその変わらなさが

9月21日、eastern youth『時計台の鐘』(NBCユニバーサル・エンターテイメント)を聴く。本作はアニメ『ゴールデンカムイ』挿入歌のタイトル曲を含む全3曲のシングル。『ゴールデンカムイ』とはどんな作品かとコミックス第一巻を読んでみる。…

フランチャイズに入れなかったので

9月17日、『愛のお荷物』(55年日活)をDVDで観る。監督、川島雄三。本作はフランス演劇『あかんぼ頌』を映画化するはずが権利がとれず内容を改変したもの。フランチャイズに入れなかったので堂々といただいてより面白い作品をと狙った感。人口抑制を主張す…

私を『浅川マキの世界』にエスコート

9月14日、きたやまおさむ 前田重治 著『良い加減に生きる』(講談社現代新書)を読む。本書は精神科医であり作詞家であるきたやまおさむが先輩格の精神科医である前田重治と過去の作品について語ったもの。『あの素晴らしい愛をもう一度』や『戦争を知らない…

作画も台詞も全て手書きゆえに

9月12日、東陽片岡 著『コモエスタうすらバカ』(青林工藝舎)を読む。本書は『プレイコミックプレイコミック』誌に08年から11年までに掲載された作品を収めたもの。毎回四頁一話完結で背景も台詞も全て手書きというスタイル。登場するのはいずれも時代から…

そうしたフラストもいずれもう一皮

6月5日、ゴキブリコンビナート『粘膜ひくひくゲルディスコ』(93年いぬん堂)を聴く。以前この場で映画『盲獣vs.一寸法師』(01年石井プロダクション)について主演男優は劇団ゴキブリコンビナート主宰のDrエクアドルなどと紹介したがこれは誤り。メイキング…

が、渋谷生まれの著者は区立原宿中学

5月31日、塚本晋也 著『冒険監督』(ぱる出版)を読む。本書は映画監督、塚本晋也がこれまでの活動歴を初めて8ミリカメラを回した14歳の頃から振り返る自叙伝。80年代の終わり、本書にも登場する石井聰互や松井良彦や利重剛など期待の新鋭監督の一人として…

血圧で人となりを探ろうとするのは

5月19日、『ときめきに死す』(84年にっかつ)をDVDで観る。監督、森田芳光。とある海辺の別荘地でひと夏の共同生活を送る男女。沢田研二演じる青年テロリスト、杉浦直樹演じるお目付け役の医師、樋口可南子演じるコンパニオンの3人を操る司令塔はパソコ…

そんな投げやりなラストも時代の気分

5月15日、ジョージ秋山 著『ドストエフスキーの犬』(青林工藝社)を読む。本書は漫画家、ジョージ秋山が70年から79年まで発表してきた作品を8編収録したもの。表題作の『ドストエフスキーの犬』は79年作品。冒頭には夕日に向かって家路を急ぐ主人公の淳少年…

今ここですべてを捨てる快感に対して

2月18日、サレンダー橋本 著『働かざる者たち』(小学館)を読む。本作はエブリスタ『コココミ』に17年5月から18年8月まで掲載された作品を単行本化したもの。同時期に『明日クビになりそう』(秋田書店)という同じサラリーマンものもリリースされた著者は“…

江戸末期、時代の節目に一攫千金を

12月21日、渋谷ユーロスペースにて、『斬、』(海獣シアター)を観る。監督、塚本晋也。国際俳優としても活躍する塚本晋也は今や「藤岡弘、」のように国内外に豊富な人脈と微妙なしがらみを抱えているのだろうか。本作は前作『野火』で戦争映画に初挑戦した…

らしくもないことはやらない姿勢を

12月20日、EXシアター六本木にて『岡林信康デビュー50周年コンサート 東京公演』を観る。予定されていた山下洋輔スペシャル・カルテットの出演は山下洋輔の負傷欠場により中止に。「どうも沢田研二です。今日は満員なんでやる気になってます」と登場するやい…

観客層は評判通りおじさんと女のコが

12月9日、昭和女子大学にて大森靖子の『クソカワ PARTY』TOURを観たがもう二ヶ月前のことなのでアルバム『絶対少女』を聴きながら印象に残っていることなどを記す。観客層は評判通りおじさんと女のコが大半。おばさんと男のコが寄り付かない実情は読み取れな…

ライブにはそれなりの覚悟を持って

11月26日、岡林信康『森羅十二象』(ディスクユニオン)を聴く。本作は68年に『山谷ブルース』でデビューした岡林信康の50周年記念アルバム。全12曲は過去作のセルフカバーを多彩なゲストと共演したもの。京都フィルハーモニー室内合奏団、坂上幸之助、矢野…

只、一端預かった役者は搾れるだけ搾る

11月16日、鴻上尚史 著『鴻上尚史の俳優入門』(講談社文庫)を読む。本書は劇作家で演出家である著者が中高生向きに俳優という職業についてレクチャーしたもの。高校演劇コンクールの審査員として青森に出向いた著者が帰りの東北新幹線の中でコンクール参加…

それでもアル仙にしか描けないものは

11月7日、『笑いのカイブツ』(秋田書店)を読む。本書は「元伝説のハガキ職人」のツチヤタカユキの私小説を史群アル仙が漫画化したもの。ツチヤには対人恐怖症の傾向がありアル仙にははっきり病名の付いた精神障害がある。この両者をブッキングする制作者…

あれは女優魂というよりガッツである

11月2日、テアトル新宿にて『止められるか、俺たちを』を観る。監督、白石和彌。60年代後半の新宿でフーテン少女から若松プロダクションの助監督となりやがて国内初の女性ピンク映画監督となる筈だった吉積めぐみの23年の生涯を描いた本作。ではあるが演じる…

大人のヒデキを振り向かせたいのは

9月7日、西城秀樹『ゴールデンベストシングルコレクション』(SONY MUSIC)を聴く。本作は72年『恋する季節』でデビューしたヒデキを83年『ギャランドゥ』まで収めた「懐刻盤」。本作のヒデキはデビューから4枚目までの青春歌謡期、『情熱の嵐』か…

本作が刺激になり欲も出てきたのか

8月31日、原作 阿久悠 画 上村一夫『人喰い』(双葉社)を読む。本作は71年1月から4月までWEEKLY漫画アクションに連載されたコミックスを初めて単行本化したもの。70年代初め、「高度経済成長の犠牲となった故郷を棄て人を喰い漁り芸能界の頂点にのぼ…

新たな名門作りに一役買って後に恩を

8月17日、西村賢太 著『夢魔去りぬ』(講談社文庫)を読む。本書は15年に単行本『痴者の食卓』として刊行された短篇小説集を改題し文庫化したもの。新たに表題作となった『夢魔去りぬ』の主人公、北町はテレビ営業にも色気を見せる人気作家。ある番組への出…

といっても映画自体が既に楽屋おち的

8月14日、小林雄次 著『モリのいる場所』(朝日文庫)を読む。本書は5月に公開された沖田修一監督の同名映画のノベライズ。著者は日大芸術学部卒の脚本家で以前にも映画ノベライズを手掛けている。同じ日芸の沖田監督の後輩。映画の録音を担当した山本タカア…

アイドルの国際作家的展開というのは

5月8日、ももいろクローバーZの『第一笑 ヘシャオイーシャオ!〜』を聴く。4人組になったももクロの再出発にあたる本作は『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ〜拉麺大乱〜』の主題歌でもある。そちらに寄せたのか前作シングルに続く日中友好路…

次元を超える作家、阿久悠の始まりの

5月3日、阿久悠 著『昭和と歌謡曲と日本人』(河出書房新社)を読む。本書は07年に逝去した作詞家 阿久悠が01年から07年まで新聞連載していたコラムを集めたもの。亡くなったのは07年8月でありコラムの最終回は7月22日。直前までNHK FMで自身のアンソ…

火木香って黒木香かなと

4月30日、阿部共実 著『月曜日の友達②』を読む。帯文には「マンガ賞総なめ!」「10万部突破!」などの二倍は大きな活字で「糸井重里さん感涙!」とある。学問の世界では30年以上前の出来事から歴史の中にファイルされるとか。若者文化史上の先人を感涙させたら…

サラダといえば芋サラダ世代である私

4月18日、『茨木のり子の献立帳』平凡社 写真=平地勲 を読む。以前にこの場で詩人、茨木のり子が唯一残した児童書『貝の子プチキュー』を児童文学の外側にいた茨木のり子が一回こっきりの冒険に挑んだ意欲作などと私は評した。が、『貝の子プチキュー』は茨…