へなちょこでいいのだと言いたい

2月7日、つげ忠男 著『成り行き』(ワイズ出版)を読む。本作の著者、つげ忠男はつげ義春の実弟にあたる。兄、つげ義春のようにブームに巻き込まれることもなく断続的に描き続け固定ファンを抱えている。本作は56年以上にもなるその活動の集大成になるかもし…

伊藤克信が全篇いい味出し過ぎの

1月25日、新宿ピカデリーにて『の・ようなもの のようなもの』(16年松竹)を観る。監督、杉山泰一。本作は11年暮れに急死した映画監督、森田芳光の出世作『の・ようなもの』を弟子にあたる杉山監督が同じく森田組出身の堀川正樹の脚本でリメイクしたもの。3…

言わば日本の「青春」は明治生まれで

12月14日、金子光晴 著 『現代日本のエッセイ 絶望の精神史』(講談社文芸文庫)を読む。本書は1965年、昭和40年に明治百年、戦後二十年と呼ばれひと段落した時代的気分のなかで詩人、金子光晴が七十年の人生と世相を照らし合わせ振り返ったエッセイ集。当初…

その不思議はもう少しそのままにして

12月20日、町あかり『もぐらたたきのような人』(ビクターエンタテインメント)を聴く。今年の夏に新宿のディスクユニオン昭和歌謡専門店にてアルバム『ア、町あかり』のフライヤーを入手して以来その存在はずっと気がかりではあった。町あかりというその新…

溢れる不安と不満をぶつけていいのは

12月12日、サレンダー橋本 著『恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。』(小学館)を読む。本書はWebメディア『オモコロ』に14年7月から12月まで更新された著者の漫画を初めて単行本化したもの。帯文に“えっ…このマンガ、サブカルをバカにしてる!?許せません!渋…

うんことおしっこは生きる上での基本

12月8日、谷川俊太郎 文 井上洋介 絵 『たべる』(06年 アートン)を読む。“この絵本、食べすぎにききます、ダイエットにもなります”というキャッチの通り井上洋介の生々しい人物描写と谷川俊太郎のえげつなくも可笑しい終末観による正しく“迫力の一冊!”主…

けれどその点は百も承知と思われる

10月13日、茨木のり子 作 山内ふじ江 絵『貝の子プチキュー』(福音館書店)を読む。本書は詩人 茨木のり子が生涯において唯一残した絵本の仕事として知られている。が、もともとは茨木のり子が放送作家時代に書いたラジオドラマの脚本を絵本向きに再構成し…

勿論一般のお客様にも応援して欲しい

9月24日、史群アル仙 著『臆病の穴』(秋田書店)を読む。本作は秋田書店コミックサイト『Championタップ!』に14年11月から15年5月まで連載された。“ノスタルジックな絵柄で、人間の心の深層を抉る「愛」の短編を14本収録”と裏表紙にある通り吾妻ひでお風の…

このマンガはスゴイのかも知れないと

9月20日、阿部共実 著『大好きが虫はタダシくんの 阿部共実作品集』(秋田書店)を読む。帯には“宝島社 このマンガがすごい!2015第一位オンナ編”とあり前作『ちーちゃんはちょっと足りない』で注目を浴びた著者の初の作品集になる。私はその『ちーちゃんは……

といっても母娘で食い物にされたのは

9月14日、山田太一 著『読んでいない絵本』(小学館文庫)を読む。本書は脚本家の山田太一が89年から08年までに発表した短編小説、舞台の戯曲、ドラマの脚本などを収めたもの。表題作『読んでいない絵本』を始め三作の短編小説はいずれも心理ホラー的要素の…

かしぶち哲郎作詞作曲によるこの曲を

7月25日、岡田有希子『All Songs Request』を聴く。本作はアイドル歌手、岡田有希子が残していった全ての音源の中からファン投票により選曲された17曲を収録したもの。ユッコといえば竹内まりやによるデビューからの三部作、『ファースト・デイト』、『リト…

働く女性に贈る知的エンタメ漫画と

7月20日、よしながふみ 著 『愛すべき娘たち』(白泉社)を読む。本作は『メロディ』誌に02年7月号から03年10月号まで不定期に掲載されたコミックス。大人の女性向けコミックスと呼べばよいのか。私の感覚からすればレディースコミックというものは性描写の…

70年組の青春はいま少しそっとして

7月15日、クリス松村 著『「誰にも書けない」アイドル論』(小学館新書)を読む。本書はアイドル歌謡の解説者としても知られるタレントのクリス松村が70年代末から80年代末を中心に展開するアイドル論。著者がアイドル歌謡に異常に詳しいことは以前から知っ…

今後に充分な警戒が必要である

7月9日、中崎タツヤ著『もたない男』(新潮文庫)を読む。本書は漫画家、中崎タツヤが自らの行き過ぎた断捨離癖を赤裸々に告白したエッセイ集。自作の漫画同様に物腰やわらかにぼそりぼそりとありていの日常を語っているかに見えてよくよく聞けばかなり異常…

その割に表立った交流があまりないのは

5月9日、谷川俊太郎 対話『やさしさを教えてほしい』(朝日出版社)を読む。本書は81年に奥川幸子、中島みゆき、永瀬清子、ぱくきょんみ他6名の女性と谷川俊太郎との対話をまとめたもの。それぞれソーシャルワーカー、シンガーソングライター、詩人と立場は…

最早吹けば飛ぶような劣化状態にある

5月3日、山下浩 監修、椹木野衣 解説『山下清 作品集』(河出書房新社)を読む。本書は「放浪画家」「裸の大将」として知られる山下清(1922―1971)の残した貼絵、油絵、ペン画などの作品群と放浪日記の一部を収録した山下清ワールドへの入門書である。「テ…

ほぼ一年がかりで本書は生まれた

4月17日、吉田日出子『女優になりたい』(晶文社)を読む。本書は女優、吉田日出子が93年に40歳を目前にこれまでの女優業を振り返る語り下し。その語りを構成したのが同じ演劇人の津野海太郎を始めとする晶文社のスタッフ。ほぼ一年がかりで本書は生まれた。…

ネタを生きながらも自己流に再編集

4月14日、いがらしみきお著『今日を歩く』(小学館 IKKI COMIX)を読む。著者が今日まで15年以上も続けてきた散歩を通じて「日常を哲学するエッセイコミック」である。著者の過去作と比べるとちょっとした新境地の感。パワー全開の大ネタとしては本書と同じ…

何だか蛭子さんに似てるなと思ったが

2月18日、横尾忠則 著『温泉主義』(新潮社)を読む。本書は画家、横尾忠則が05年11月より07年12月まで雑誌に連載していた紀行文を一冊にまとめたもの。そもそもが温泉嫌いだった著者が仕事がらみで銭湯協会にかかわった際に「銭湯の次は温泉に行って、それ…

グランドホテル形式と呼ばれる作劇を

2月3日、テアトル新宿にて『さよなら歌舞伎町』(14年 映画「さよなら歌舞伎町」制作委員会)を観る。監督、廣木隆一、脚本、荒井晴彦。新宿歌舞伎町のとあるラブホテルを舞台にそこで働く人々、訪れる客、性風俗関係の仕事を持ち込む常連客らのそれぞれ複雑…

いじられキャラのまま30年もいじられ

2月11日、蛭子能収 著『ひとりぼっちを笑うな』(角川ONEテーマ21)を読む。本書は漫画家で俳優業、タレント業もこなす蛭子さんによる人生指南書である。あの蛭子さんに人生指南書を授かりたい人間なんて世の中にいるのかと思う。が、普通の人間が超一流…

と、いうストーリーだけ書き出すと

2月22日『虫と歌 市川春子作品集』(講談社)を読む。本書は06年10月から09年12月のあいだにアフタヌーン誌上にて漫画家、市川春子が一話完結で発表してきた作品を一冊にまとめたもの。収録作は表題作の他に『星の恋人』、『ヴァイオライト』、『日下兄弟』…

公開当時にはなんだかなあとも

12月16日、『あ、春』(98年トラム)をDVDで観る。監督、相米慎二。01年に死去した相米慎二の遺作は本作の次に撮った『風花』(01年ビーワイルド)である。が、『風花』は劇場で一度観たきりDVDで観返す気がしない。何やら具合の悪そうな映画だと私は…

果たしてその回答はただそのままで

12月9日、『深沢七郎ライブ』(話の特集編集室)を読む。本書は作家の深沢七郎が87年に死去した翌年に親交のあった雑誌『話の特集』の編集者、矢崎泰久を中心に限定出版されたもの。その内容は随筆と対談のベストセレクション、色川武大、尾辻克彦、野坂昭如…

しかし、ふがいないといえば

12月3日、青山円形劇場にて『夕空はれてーよくかきくうきゃくー』を観る。作=別役実、潤色・演出=ケラリーノサンドロヴィッチとチラシやパンフにはクレジットされている。潤色というのは色どりを添えるなどの他に事実どおりでなく面白くするという意味があ…

安藤サクラならもらえるものは

11月29日、有楽町スバル座にて『0.5ミリ』(13年 ZERO PICTURES/REALPRODUCTS)を観る。監督、脚本 安藤桃子。本作の主人公山岸サワを演じるのは監督の実妹でもある安藤サクラ。エグゼクティブ・プロデューサーに奥田瑛二、劇中登場する手料理を監修するフー…

着くなり夜飯は生ものだから早く

10月19日、藤原新也 著『日本浄土』(東京書籍)を読む。本書は写真家でありエッセイストでもある著者が04年から08年までに雑誌『coyote』などに残した紀行文を単行本化したもの。著者は70年代初めからこの時点で三十年近くも地球のいたるところへ旅し…

映画の方はよくてもB級扱いの

10月11日、あがた森魚・大瀧詠一『僕は天使ぢゃないよ』(KING RECORDS)を聴く。本作は75年に“あのデニス・ホッパー『イージー・ライダー』に触発されてあがたが制作、監督、主演した同名映画のサントラ”なのだが映画をDVDで観たかぎりそれが…

コミさんは当時そちら側でこんな風に

10月9日、金子光晴対談集『下駄ばき対談』(現代書館)を読む。95年に詩人、金子光晴の生誕百年を記念して刊行されたはずの本書。内容は70年代初めから半ばまで週刊誌上などで金子光晴が繰り広げてきた対談をまとめたもの。ゲストは野坂昭如、寺山修司、岸恵…

何だかんだと実は皆一様に育ちの良い

9月30日、早川義夫 著 『生きがいは愛しあうことだけ』(ちくま文庫)を読む。本書は歌手、早川義夫が05年から14年初めまでにあちこちの出版物やサイトに寄稿した文章をまとめたもの。内容は近年死別してしまった音楽仲間たちへの追悼文、奥さんや恋人との生…