危険と引き換えに堅気の数倍の収入を

1月26日 、石井光太 著『浮浪児1945−戦争が生んだ子供たち』(新潮文庫) を読む。本書は77年生まれのルポライター、石井光太がこれまで途上国のストリートチルドレンを取材し数々のルポを記した際に日本国内では同じような問題をどう解決してきたのかを疑問に…

こうした節倹精神はデビュー当時から

1月20日、eastern youth 『SONG ento JIYU』(裸足の音楽社)を聴く。昨年これは間違いなしとショップで手に取るも何故か聴き逃していた本作。音楽誌等の年間ベストにはほぼ見かけずもしや残念賞と疑いつつ。イースタンユースにはまだ辛うじて紅白出場叶うほど…

笑わば笑えといった経済事情の中で

1月17日、『円谷プロ特撮ドラマDVDコレクション50号』(ディアゴスティーニ)より『怪奇大作戦 第22話 果てしなき暴走』を観る。脚本、市川森一。『怪奇大作戦』は68年、TBSで放映された“科学を悪用して犯罪をおかす者と正義と科学を守る者との対決を描く怪…

歴史の上では『解体新書』といえば

1月13日、みなもと太郎 著『風雲児たち〜蘭学革命篇』(リイド社)を読む。本書はNHKの正月時代劇として三谷幸喜脚本でドラマ化されたばかり。みなもと太郎による原作漫画は40年近くも連載されている超大作だが。本書は三谷脚本がつまんだ蘭学者、前野良沢と杉…

本作にはまさしくあの頃の空気が

11月4日、『夏の終り』(12年 クロックワークス)をDVDで観る。公開時に劇場で観たがその時は何度でも繰り返し観直したい作品だとはあまり。ところが今になって本作を何度も繰り返し観たくなった。パンフレットの表紙裏には2012年『夏の終り』制作委員会とある…

20年ぶりに触れたこの最新作と

11月3日、BRAHMANの『今夜/ナミノウタゲ』(17年 トイズファクトリー)を聴く。96年に結成し現在も活動を続けているBRAHMANの音楽に私が初めて触れたのは世にマキシシングルなるものが出回った頃。既に三十面下げてレンタル店でアルバイトをしていた私の周囲…

橋本治もすっかりオールドボーイか

10月20日、橋本治 著『バカになったか、日本人』(集英社文庫) を読む。本書は作家、橋本治が2011年から2014年まで主に『週刊プレイボーイ』誌上に発表した時事コラムを再編集したもの。週プレの論客といえばプロレスで言うマット界の裏を知り尽くした人物の…

期待の新鋭の決定打になりそうな

10月17日、阿部共実 著『月曜日の友達①』(小学館)を読む。前作『ちーちゃんはちょっと足りない』で漫画界の本屋大賞にあたる″このマンガがすごい!2015オンナ部門1位″を獲得した阿部共実の最新作。現在も『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて連載中。期待…

ももクロにも以前からメタル的要素は

8月22日、ももいろクローバーZの新曲『BLAST!』を聴く。ジャケット上はアーティスト名も英語表記の本作。通常盤のジャケ写はメンバー全員持ち色のスポーツウエア姿だが豪華盤では黒を基調にしたレザー仕立ての忍者姿のものもあり明らかにBABYMETALを意識し…

著者と同世代の私には黙々と読ませる

8月20日、スージー鈴木 著『サザンオールスターズ 1978-1985』(新潮文庫)を読む。本書は66年生まれの音楽評論家である著者が小学生時代から聴き惚れてきたサザンの魅力と足跡について検証したもの。著者と同世代の私には黙々と読ませるもうひとつの″ニッポン…

つまり自作の海賊版をみずから再産して

8月17日、水木しげる著『姑娘』(講談社文庫) を読む。本書は漫画家、水木しげるが貸本時代に残した軍記もの4篇に主題作『姑娘』を加えた編集版。但し初期作品はどれも画が荒く不鮮明。同様の荒っぽい仕上がりの貸本時代の全集が地元の図書館にもあるのだが。…

ともすればこれが見納めという主旨も

7月22日、鹿嶋勤労文化会館にて岡林信康弾き語りライブ2017を観る。フォークの神様こと岡林信康は3年前より弾き語りツアーを始めた。きっかけはデビューの頃からの付き合いだったカメラマンの突然死だとか。自身にまだやり残した仕事はあるかと問い質した後…

今観ても充分スマートでカッコいいと

5月24日、『RCサクセション AT BUDOHKAN』 (ユニバーサル ミュージック)を観る。本作はRCサクセションの第一回目となる日本武道館公演の模様を収めたもの。81年12月24日のこのステージは翌年フジテレビで『愛しあってるかい? RC at 武道館』という一時間の…

70年代初めに百花繚乱の盛り上がりを

5月20日、隔週刊『円谷プロ特撮ドラマDVDコレクションvol.22「ミラーマン」第16話 人形怪獣キンダーを追え!』(ディアゴスティーニ) を観る。監督、東絛昭平。70年代初めに百花繚乱の盛り上がりを見せた特撮ヒーロードラマの中でも特別な存在だった気がするミ…

本作ではこの田中眞紀子ギャグが定番

5月14日、町田康 著『猫のよびごえ』(講談社文庫) を読む。04年から刊行されてきた著者の猫エッセイも13年に終了しこの度文庫化されたこれが本当の最終巻。前作『猫とあほんだら』のあとがき始めに「伊豆半島で毎日、猫と遊んで暮らしている。というときわめ…

業田良家はやはり強情張りの職人肌か

5月5日、業田良家著 『男の操』 (小学館) を読む。本作は13年に『機械仕掛けの愛』で手塚治虫文化賞を受賞した著者が03年より『ビッグコミック』に連載し06年に単行本化されたものを再編集した改訂版58年生まれの著者、業田良家は23歳で漫画家デビューし、25…

その辺の大友チルドレンより一皮も

2月25日、うめざわしゅん 著『うめざわしゅん作品集成 パンティストッキングのような空の下』(太田出版)を読む。″不世出の天才、うめざわしゅん。2001年〜 2015年にわたる傑作読み切りを9編収録″と記された帯文には漫画界のみならずカンパニー松尾、末井昭、…

その辺の大友チルドレンより一皮も

2月25日、うめざわしゅん 著『うめざわしゅん作品集成 パンティストッキングのような空の下』(太田出版)を読む。″不世出の天才、うめざわしゅん。2001年〜 2015年にわたる傑作読み切りを9編収録″と記された帯文には漫画界のみならずカンパニー松尾、末井昭、…

そもそも勝ち馬には乗らない気質の

2月18日、三田完 著『不機嫌な作詞家 阿久悠日記を読む』(文藝春秋 ) を読む。本書は作詞家、阿久悠をアシストしてきたオフィス・トゥ・ワン所属の作家、三田完による阿久悠日記の解読書。累計七千万枚のレコード売り上げを持つ作詞家の日記ゆえに本書はその…

なんちゃあない話を悪く思わないで

2月10日、安倍夜郎 著『なんちゃあない話 』を読む。本書は人気コミック 『深夜食堂』の作者、安倍夜郎が故郷である高知県、幡多郡のフリーペーパーに連載していた東京発地域密着エッセイ。41歳でデビューしてヒット作をものにした現在、ともに壮年期に差し…

本作はいまおかしんじ版あまちゃん

1 月31日、上野オークラにて『感じるつちんこ ヤリ放題!』(OP映画)を観る。監督、いまおかしんじ。本作は今やピンク映画の巨匠になりつつあるいまおかしんじの最新作。ヒロイン園子役に涼川絢音を迎えて不可思議な下町人情グランギニョールを展開する。主人…

本作がセールス的に急上昇していたら

11月19日、小沢健二『球体の奏でる音楽』(東芝EMI)を聴く。佐々木敦の『ニッポンの音楽』の後半「渋谷系の物語」の章を読み、96年に小沢健二が同じ東芝EMIの浅川マキのバックを務める渋谷毅と川端民生をゲストにジャズアレンジのミニアルバムを発表…

もっと言えば後半の後半、もっと

11月17日、佐々木敦 著『ニッポンの音楽』(講談社現代新書)を読む。本書は70年代からの日本のポピュラー音楽史を十年区切りに振り返り物語化したもの。物語とは『成りあがり』や『GLAY物語』のように独自の視点で物語るニッポンの音楽の寓話のこと。だ…

エビス本は出せばそこそこ売れる昨今

11月10日、蛭子能収 著『パチンコ 蛭子能収初期漫画傑作選』(角川書店)を読む。本書は漫画家、蛭子能収のデビュー作『パチンコ』を含むガロ時代、つまり原稿料の出ないマニアックな漫画誌にみずから持ち込んで描かせてもらっていた頃の入魂の初期作品を集…

もう飛躍しない、ジャンプしない

11月8日、渋谷TOEIにて『ぼくのおじさん』を観る。監督、山下敦弘。前作『オーバー・フェンス』をテアトル新宿で観た際、原作小説のファンなのか50代、60代の壮年層も多かった客席をこれまでの漫才調ではなく人物の佇まいや会話の間合いで笑わせている山…

貧者と貧者が尻の毛までも毟り合う

9月3日、平田オリザ 著『下り坂をそろそろと下りる』(講談社現代新書)を読む。本書は前作『わかりあえないことから―コミュニケーション能力とは何か』のヒットを受けて同じ新書シリーズから出たもの。帯文には“あたらしい「この国のかたち」”とタイトルよ…

プライベート盤のゆるさを全面に

8月24日、『悲しき夏バテ』布谷文夫(ユニバーサルミュージック)を聴く。本作は73年8月、大瀧詠一プロデュースにより発表されたブルース歌手、布谷文夫のソロデビュー作。内ジャケには布谷文夫とレコーディングメンバーらが草野球に興じるスナップ写真が並…

夏目漱石の言わずと知れた原作小説を

8月10日、大和田秀樹 著『坊っちゃん』(日本文芸社)を読む。“日本文学史上、最も有名かつ多く読まれた名作を漫画界随一の鬼才が漫訳したらこうなった!”と帯文にある。夏目漱石の言わずと知れた原作小説を「漫訳」した大和田秀樹なる著者には『機動戦士ガ…

そうしたいびつな笑いも本書には

8月7日、蛭子能収 著『ヘタウマな愛』(新潮文庫)を読む。本書は02年8月 KKベストセラーズより刊行されたものを文庫化した所謂タレント本。有名人が夫や妻との闘病記や哀悼の思いを綴った著作の類を蛭子さんも出していたのを私は知らなかった。が、蛭子さ…

もう何もするなと、只じっとしている

6月4日、平田オリザ 著『わかりあえないことから』(講談社 現代新書)を読む。本書は劇作家であり演出家でもある平田オリザが近年大阪大学コミュニケーションデザイン・センター客員教授となり様々な現場でコミュニケーション教育に携わってきた体験から“コ…