地上は何かとヤラセ臭いんである

 9月4日(日)、狭山の稲荷山公園にて「ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル2005」を家主のエイチに連れられて観る。正午に開演し若手バンドを3組観終えた時点では天気もよく開放感というよりダレ感に包まれ始め芝生にうずくまりウトウトしたり。
 が、夕方4時を過ぎた頃から途端に天気はグズつき鈴木慶一率いるハーフムーンライダースのステージが始まると黒澤明の映画並の劇的暴風雨に。そんな。そんな演出いいから。すり鉢状の観客ゾーンの最前列に「持ち主のわからない荷物が流されています」と場内アナウンスが入るが笑う気力の残っている聴衆はまばら。
 6時半にエリック・アンダースンが登場。開場時には炎天下でふうふう言いつつリハーサルをしていたエリック・アンダースンの姿が思い出されて気の毒になるが本人はこの日の観客に好感を持ったらしい。グッズ売り場でCDにサインをして帰ったとか。その後の佐野元春&ザ・ホーボー・キング・バンドまで聴衆の体温は悲惨な悪天候をあって無いものにするべくなるべく暖めていたと思う。メインアクトの細野晴臣をどうしようもない気分で迎えたくないという祈りに近い集団意識がこの日の会場全体にあったような。
 「お待たせしました。細野さんもうすぐ出ます」と前説が入った時点で天気はピタリと落ち着いた。一流の人はお天気まで思い通りにしちゃうねなどとささやき合う声もありそうかも知れぬと感心もしたが。「この会場のすぐ近くの米軍ハウスに2年間住んでた」細野さんに言わせると「地元じゃこの季節にこんな天気はよくあるの」だそうだ。やはりある部分演出か。
 しかしステージは本当に素晴らしかった。小坂忠そっくりのヒゲ面とメイクの三上敏視がアコーディオン演奏以外にも魔術団的いかがわしさを放っていてメルヘンチックだったし本物の小坂忠と細野さんとの言葉少ないやりとりと抱擁する姿にはもらい泣きしたが。YMOすらリアルタイムじゃないはずの20代の観客までもらい泣きしてるのは一体。戦中派の詩人や小説家同士が互いの足跡を祝うパーティであの様にひしと抱き合う姿は何度も見てきたがロックミュージシャンのそれは初めて見た。記念すべき瞬間だったのかも知れない。
 「ニューオリンズに捧げようかな」とやおら突然若々しいノリで繰り広げられた「Pom Pom蒸気」が忘れられない。しかしこの日の若者客に大ウケだった目が見えない指動かないといった老人ネタを細野さんは当分振り続けるに違いない。どこまで笑っていいのか実際わからないんですよ円歌師匠。