あなたのアルプス今一万弱である

 だが待てよ。確かに先週のハイドパークの細野晴臣は素晴らしかった。素晴らしかったですよそれは。でもその際中私の頭の中でモヤモヤしていたことがある。ハイドパーク前夜に家主のエイチと川越駅前のメインストリートをウロチョロしていた時のこと。こうしたローカル都市では止むを得ないのだろか大人と子供のプレイスポットがひとつの通りにクロスオーバーしていると感ず。街頭キャッチの青年団に「どうですオッパイパブ、ねぇ飲み放題モミ放題」と声をかけられた場所から数歩過ぎるとプリクラの店に少女らがあふれ並んでたり。何と言うかぶっちゃけた街。サマー・イン・バンコク?カワゴエ?
 そんな川越のブックオフにも商売柄チェック入れたがるエイチにくっついて私もトボトボと店内へ。しばらくCDコーナーやサブカルコーナーを流し見つつごく自然なフォームでアダルトコーナーへたどり着く。40年近くも生きてきて上級者の部類に入ったことといえばこんな時の身のこなしだけ。どうでも良さ気な視線を棚の上下左右にザッと流す。見つけたぞ、何を。細川しのぶの初期のAV出演作を一本発見。同じ時期にリリースされた作品を神保町のアダルトショップで一万弱で売っているのをしつこく覚えていたがこちらはたったの九百五十円とは。安過ぎるのではないか。この市場ではプレミアム自体がシャレというか御愛嬌のようなもので都心で何万の品が田舎じゃ百円でも誰も騒がないのだな今時とすぐ納得はしたが。
 納得して素直に買っときゃ良かったものをどうしてか棚に戻してスゴスゴと店を去った。歴史的ライブ体験の前に中古AVあさりというのも気が引けるし。しかし細川しのぶ。細川ふみえ堀江しのぶに似てるっちゃ似てるという理由から名付けられたに違いない90年代をゆるやかに駆け抜けたAV女優。デビュー当時の成人誌のインタビューで将来の夢は小田原で彼氏と小さな店を持つことと語っていたのが印象に残る。小田原って何か。何かそっちの方がロマンポルノ的詩情感じさせるじゃないかと。その小さなスナックに港雄一の労務者は毎夜嫌がらせに来るのかと。
 エイチに聞くところではセコハン業界全体では今これがブームと呼べそうな大波は常にいくつかあるが基本的に何でも売れるという。つまりふた昔前の芝居してるAV作品の熱烈なマニアであればそうした今ではゴミの様な品にも大枚はたくわけで要はきっかけづくりなのだと。小田原の安スナックを舞台にした細川しのぶの熟女AVがあるらしいですよ。川越のオッパイパブ限定発売で価格応相談らしいすよ。