一歩間違えば本物扱いである

9月9日よりラピュタ阿佐ヶ谷にて『熱狂のグループサウンズ時代』と題して68年〜69年に公開された数々のGS歌謡映画を一挙にレイトショー上映する。といった紹介記事を先だってスポーツ新聞の片隅に見つけた。スポーツ紙に紹介されたならこれは結構な盛り上がりが期待されると思い出向いた。
が、やはりいつものラピュタらしいおごそかなレイトショーであり半分はズッコケ半分は安心したり。客入りは7割弱でGSリアルタイム組の女性客、カルト邦画全般のマニアな客、映画学校もしくは演劇学校生らしき若者客のミツドモエといった感か。しかしその中に20代後半位の女性客もいて彼女達のファッションというのがGS歌謡映画に出てくる当時のアイドル女優風なのに少しおののく。
 70年代初めに生まれたはずの彼女達にとって60年代終末の中村晃子や尾崎奈々のオシャレが懐かしかったり勉強になるものなのかと。多分こうしたイベントの場以外で今そのような異様なスタイルでペロペロキャンディー片手にニタニタねり歩けば間違いなく本物扱いで周囲は警戒するだろう。80年代後半のネオGSの女のコ達の数倍の度胸がいるだろうと思う。本人も手探りのコンセプトがわかってもらえるかどうかも一か八か。下手をすれば林家ペータイガーマスクを見る目で見られてお終いなのだから。私も彼女達のクソ度胸を見習ってマッシュルームカットにタイツ姿で再来館すべきか。
 今のところ上映作品は全て通い観ている。『ザ・スパイダースの大進撃』をちゃんと観るのは初めてということはいい加減には観ていたのかと問われればいい加減には観ていた。この種のGS歌謡映画は私の中学時代の80年代初めのとある日曜の昼下がりにこれでもかとテレビ放映され続けてきたものばかりなのだ。日曜の午後三時前後に自宅のお茶の間でウダウダ過ごす中学生のナーバスな心情を逆撫でするには充分のアナクロ趣味であったのだ当時のこうした旧作群は。今それらの作品を夜な夜な小一時間も電車にゆられ入場料金を払ってまでむさぼり観ている自分が不思議っちゃ不思議なのだが。
 上映終了後に会場を去りかけると観客の中に70歳くらいの男性客もいた。この男性は60年代終末に30歳くらいだなと当たり前のことを思った。日本中がまだ青春してたなどと評されるあの時代のことをしみじみ思い出しているのかしらとも思った。60年代終末の泉アキをどうかしたい気持ちを今この時代になるべく建設的に昇華させたいのですが。そんなことを相談しても仕方ないかとも。