赤い分度器もノーコメントである

9月28日、自宅付近の巨大スーパーでインスタントラーメンとパックのしめじ、メンチカツを買い帰る途中のこと。ほぼ20年以上も住みついた街ながらもあまりボロシブ過ぎて今だ一度も寄ったことがないめし処の店先にポリバケツが放置してある。そのポリバケツのフタにスポーツ新聞がかぶせてある。一面の見出しに手のひら大の活字で「自殺」とある。
誰が自殺したのかしらんと思わず足を止めてその紙面を読み始める。自殺の二文字の隣に「青い三角定規」とある。青い三角定規高田真理入間市の自宅マンションから飛び降り自殺を図ったらしいことはまずわかった。直前に飲酒運転でミニバイクの女性をはねてしまい精神的にも非常に不安定だったらしいということも何となくわかった。
で、結局死んじゃったのか一命はとりとめたのかしらんとめし処の前のポリバケツの上でスポーツ新を広げかけてふと気づいた。これは随分と不謹慎な態度ではないか。めし処のポリバケツのフタにかぶせてあったスポーツ紙の死亡記事をしげしげ手に取ってまで高田真理の最期について何をどこまで知りたいというのか。何たる俗物。はっきりと老成しとるな俺もとスポーツ紙を元に戻してとぼとぼ歩く。
青い三角定規が今年の夏に再結成するという芸能ニュースを8月初めに郷里のテレビで知った時は正直どうでもいいような気がした。あまりタイムリーでもないような。ただ当人達がもう五十代半ばで表舞台にふらりと戻るにはギリギリのところなのだろうなとも思った。しかし実のところどのくらい乗り気なんだろうかとも。青春プレイバックなこの種の復活イベントを得意とする有力者とのしがらみで無理矢理引っ張り出されたんじゃなかろうかとも思った。
ま、そんな所から再結成の青い三角定規には全く興味が沸かなかったのだが。このような事態を迎えてしまうと気持ちは複雑である。数週間前に歓喜した再結成フォークルだって一般には知られていないドロドロした人間模様があったのかもしれない。現役時代と同じスタッフが仕切るのか全く違う人物が介入するのかでもくすぶるものはあるだろう。いざ乗り出してみたらとても同窓会気分で盛り上がれるようなものではなかったのかも知れない。
安西マリアみたいにふらりと復帰してもほとんど話題にもならなかった例はこうなると不幸中の幸いではなかろうか。本当に嬉しいやるやると思っていたのか高田真理。『太陽がくれた季節』を何となく口ずさんでいたおとといの日暮れ時にはまだ悲報について全く知らなかったことが奇妙なのかそれとも。