極楽とんぼは早過ぎたのである

11月11日、ラピュタ阿佐ヶ谷にて『いちどは行きたい女風呂』を観る。70年日活作品。監督、江崎実生。浜田光夫、前野霜一郎、沖雅也の浪人トリオがくりひろげるハレンチ喜劇である。が、笑いのセンスはいかにも70年代的なボンヨヨヨーン感覚に終始したもの。沖雅也風呂屋の息子なのでバイトでもぐりこんだ浜田光夫が当然女風呂のぞきに熱中する。女風呂の客らは一部大部屋女優で残るその他大勢は今見るとどこからカキ集めたものか。ドタバタ劇を無理矢理演じさせられている当時のストリートガール達なのだろうけれど。彼女らがカメラの前でもユルユルの遊び半分で皆一様に半笑いなのだ。遊びじゃないんだからちゃんとやってくれみたいな激を飛ばそうものなら即帰ってしまうからだろうか。劇場映画で裸でガヤを演じてくれる素人娘を20〜30人弱でも呼び寄せるのは当時大変な労力だったろう。そのことを考えたら内容の不出来など文句も言えないか。内容はヒドイ。しかし私は本作を以前からいちどは観ておきたかったのだ。何かの特集上映の休憩時間にホンワパッパ、ホンワパッパいちどは行きたい女風呂っという本作のテーマ曲を聴いてからずっと気になって気になって。ところがオープニングでテーマ曲が流れた所まではニヤリとさせられたもののそれまでだった。具体的に何がヒドイったら例えば喫茶店やスナックで隣の客が席を立ったすきにコーヒーや酒に塩やコショウを入れて戻った客がそれを飲んでドヒャーといった…。こんなギャグで当時の若者は大笑いしていたのかどうか。時代の気分をそらそれと提出するのはむずかしいが。ユーモア商品のブーブークッションなんて物が大流行していた時代である。やっぱりそれなりにウケていたのかとも。浪人トリオの一人、前野霜一郎はラリラリのヒッピー役で登場するが。以前『団地妻昼下がりの情事』のポン引き役の前野を観たとき私は前野のことを助監督時代の崔洋一かと思い違いしていた。似てるのだ。で、その前野だが確かロッキード事件の頃、児玉邸にセスナ機で突入した俳優こそが前野霜一郎だったような。これも思い違いか。今この映画を観ながらそのことを私同様思い返している観客はいるのかと会場を見回すが。案外50代位の男性客は70年代ギャグに結構ウケているのだ。とりつくしまもないな君達と『愛と誠』の岩清水宏のように一喝したくも。ただこの映画を観たあとで私にも三島由紀夫が自決した背景がボンヤリ見えたような。このどうしようもなさが続く訳じゃないのですよとは今もとても言えないと思うが。