今日から君は一枚千円なのである

11月16日、前の晩に南かなこの『走れ歌謡曲』を聴くために仮眠したので今朝は酒気なし。宿酔い状態ではなしに新宿にぶらりと出たのは久方振り。そしてまったくのシラフで新宿ニューアートの階段を降りるのは実は初めてである。番付表をチラリと見やる。トリの香月藍というコはまだ新人のよう。たぶんイイ体をしているか美少女タイプかどちらか。は、いいとしてトリ前の天使美樹ならもう何度も観ている。いつもはトップから三番手くらいまでの出番にいてルックスよりも体当たりのアクロバティックなダンスで魅せるタイプ。ポラは一枚五百円。が、今日はトリ前だから一枚千円では。中村玉緒の若い時みたいなルックスの天使美樹は週刊大衆か実話か忘れたがその辺りのオジサン誌の舞姫レポートに取材されたりしている。ドラマ『結婚できない男』の中の台詞に「七十歳位の老人から見れば君もカワイイ女の子なんだろうね」というのがあったがそんな風。そんな風って別に天使美樹が男まさりで生意気ということではなくて。おじいちゃん達からみたらまだおぼこい少女のような。実際は30歳前後かと。以前に『ベルサイユのバラ』を踊っているのを観てそう感じた。ステージに使うための選曲が本人の趣味である場合もない場合もあるのだろうけど。私は本人の趣味丸出しの方が好きかと。それがあまりに幼女ロリロリ世界に終始していてオナニー的でさすがにゲンナリさせられても。田中小実昌はツマンナイ映画をしつこく観ることで人間に深みが出てくるというようなことを書いていた気がするが。言ってしまえば商品価値あるんだろかと思わせる新人タレントの秋葉色ムキ出しの衣装とダンスをしつこく観ることで人間に深みは物凄く出るような気がする。で、天使美樹はどちらかと言えば人間に深みを出させてくれる方のタレントなのであるが。が、今回は違った。舞台向って右に設置されたポールを利用した得意のアクロバティックダンスは今年のベストワンかも。そのくらい「突き抜けた」ステージだったのだ。ウッチャンナンチャンのブレイク時の定番ギャグ「突き抜けろォー!」を思い出す。四十男にもなった私が今時の小劇場に突き抜け感を得ることはもうないだろう。ニューアートで突き抜けてます俺は今。絶対に彼女の趣味だろうなと感心してしまった斉藤由貴の『夢の中へ』のCDを帰りに神保町で探し回る。あった。富士レコード社にて千円。「廃盤」のスタンプもせつなくて良いなと。89年5月にテレビで歌う斉藤由貴を観て私はこれになると思ったのか天使美樹。何たる土性骨よ。