一人コートの襟を立てたのである

1月17日、文化放送南かなこの『走れ歌謡曲』を例のごとくうつらうつら聴いていた。が、その日の放送の冒頭にて南かなこは「ここで皆さんに大事なお知らせが…」と沈みがちに語り始めた。今月26日に予定していたデビュー5周年コンサートが声帯不調のため中止されることが決定したとのこと。私はそのコンサートのチケットを買い逃してあきらめていた。じゃあよかったじゃないのとも思えず涙まじりにファンと関係者にわびる南かなこに胸を打たれていたが。石橋正次の『夜明けの停車場』をオンエアーしたのはそんないたいけな彼女へのスタッフからの愛情からか。
声帯をだめにしてあえなく歌手を廃業してしまった例は過去にも何度かあった。が、それが自分のフォローしている歌手には起こらないと限らぬことを私は忘れていた。思い出した。年末の深川不動尊でストリートライブを開いていたときも余り声の調子はよくなかったし曲も短めに切り上げていたのだった。通りすがりの人々にタダで歌いまくってはいつまでも値打ちが上がらないからだろかと私は思った。前回同じ場所でコンサートのチケットを手売りしていたので私はそこでチケットを入手するつもりでいた。が、その日チケットは手売りされていなかった。もたもたしてたら完売しちゃったのかなと私は思った。私としては深刻に売れ残ったチケットを直接本人の目の前で買い求めて全然売れない頃から観に来てくれていた熱心なファンとして彼女の記憶に残りたい助平根性があったのだが。現実はシビアであった。
多分あの時からこのままコンサートを開いて大丈夫なのかと身内は心配してチケット販売も止めてしまったのだろう。何ということ。コンサートは声をつぶさなければまたいつか開けるのだからゆっくり静養してねという内容のメールが放送中に番組に何通も届いた。私も早速メールを送りたかったがケータイすらない。ハガキでリクエストぐらい送ろうか。止めとくか。そもそもオマエのような貧乏神にフォローされたから彼女はどんどん成功から遠のいていくのだと天の声が聴こえる気がする。そうなのだまったく。過去にもこの場で今個人的に夢中で応援している女性アーチストの勝手な状況ルポを書いてきた。皆かならずといっていいほど消息不明になってしまうではないか。だからオマエが追いかけるとその芸人は表舞台から消えてしまうのだ。
南かなこを本当に応援したいなら今後はそっとしておくのだと天の声が聴こえる気がする。忘れ得ぬ君ゆえにここは忘れてしまわねばと思う。夜明けの停車場にて。