神田川保存会を模索中である

ちゅな訳でこのところドラマ『気まぐれ天使』のDVDを毎夜チビチビ観続けている。76年10月から翌年10月まで放映された本作を私はリアルタイムで観ていたはずなのだ。が、改めて見直してみるとやはりかなりの部分を忘れ去っていたようで。その反面どうでもいいような小枝ギャグには懐かしさがこみ上げたり。
たとえば石立鉄男演ずる加茂忍の恋人ターコを大原麗子が好演していたのはもちろん覚えていたがそのターコに同居中の実妹がいて秋野陽子が演じていたことなど完全に忘れていた。忍の下宿先である高田馬場周辺の古本屋の二階に転がり込む悠木千帆演ずる婆サマのことはもちろん覚えていたが婆サマがそもそも忍とは只の通りすがりの他人だったとは意外だった。劇中何度も自身は貴族だの豪農だの家柄云々のことを繰り返す婆サマに忍は親の代から何がしか負い目があるのかと当時私は思い込んでいたらしい。当時小学三年生。婆サマが寝言で「あふりか象が好きィー」と叫ぶギャグはハッキリ覚えていたが同じことを久世ドラマでもやっていたような。「あふりか象が好きィー」は無論『がきデカ』の定番ギャグだが悠木千帆のオリジナルのような感が本作の方ではする。電線音頭の本家も桂三枝だったしなァなどと70年代感覚がジワジワ我が身に取り戻されてきたような。悠木千帆とは今の樹木樹林だが確か本作の後で芸能人の身につけている物をその場でオークションする番組に出演時に芸名を売ってしまって樹木樹林に改名したはず。ま、それは突発的な出来事だったのだが「悠木千帆」は70年代で賞味期限切れであったかもしれないなと今にすれば思う。そのオークション番組は私が観た回ではタモリが出演し「眼帯くれよ!」とからかう観客にスペアをポケットから二個も三個も客席に仏頂面で投げ込んだ姿がまた変なトラウマとして残っている。公開番組に現れるガヤは皆一皮ムケば暴徒であったような76年。『Gメン75』の毎回後味の悪いエンディングを中和させるのは『ウィークエンダー』の再現フィルムの濡れ場を待つしかなかった当時小学三年生。
ところで本作の主要キャストの中で正しく現在も活躍中といえるのは忍の高校時代の後輩で職場では上司にあたる榎本一光役の森田健作だろうか。そして森健だけが残ったかァと思って本作を見直すのは淋しいことである。が、幸いにして私の住む仮説住宅は風呂なし共同トイレ怨霊付きと70年代ムードは充分。小坂忠のメインテーマをくちづさみつつ毎夜本作を楽しむ今が76年と思えない方が難しいくらいだ。気まぐれ風のインテリア収集も現在思案中。