誰かの予言が当たる時なんである

7月16日、神保町の中古ビデオショップを物色。仕入れ日を先読みしたマニアが開店前に並ぶほどの濃厚な中古ビデオショップが付近にあったのだが最近クローズしてしまった。そこは品揃えばかりか値段も不気味なまでに良心的な店であった。が、それに負けじと貧困な私はエンケン主演の和製ロックミユージカル映画『ヘリウッド』がたったの600円で無造作に棚に並んでいながらも手が出せないままであった。
600円の『ヘリウッド』に縮こまりながらも200円の『胸さわぎの放課後』にはつい手を出してしまったり。仮に今が80年代前半で仮に私が10代半ばであったなら『ヘリウッド』を通過するか『胸さわぎの放課後』を通過するかは考えどころである。が、4半世紀後の現在に40面下げたネズミ男エンケンに影響されようがひかる一平に影響されようが勝手にしてくれと世間は言うだろう。実際言われた。言われた気がした。
その日、中古ビデオショップで『ウルトラマンレオ』のビデオを280円で入手した私はその足で何となく近くのアダルトDVDの店につい流れた。すると入口で警報ブザーが鳴り店員が駆け寄ってきた。お客さんちょっとお荷物を拝見などと私のズタ袋の中身を確認し始めた店員が「あぁコレね」とため息まじりに『ウルトラマンレオ』のビデオを取り出した時。第1話セブンが死ぬ時!東京は沈没する!のタイトル通り私の中で何かが死に何かが沈没したような。「じゃあこちらちょっとレジでお預かりしときますわ」と脱力気味に私のズタ袋を持ち去る店員の顔。やれやれ何だよウルトラマンレオってとは言われなかった。言われなかったが言われた気がした。
盗難防止シールがケースのどこかに貼ってあったということはつぶれたレンタル店からの放出品なのだろう。レンタル時代に道をあやまりかけた少年たちを何人も救ったのかもしれないたった1枚の盗難防止シールが最後の仕事として迷えるネズミ男を救おうとしたのか。まだ救われる余地があるのだろうか今の私にも。ZARDのラストシングル結構感動しちゃったんですよねと誰にともなくつぶやきたくもなったり。
ウルトラマンレオ』には中年になったモロボシダンが隊長役で登場する。ダン役の森次晃嗣は寄る年波にくたびれている。プライベートでの女性遍歴を週刊誌にブチまけて不評だった頃か。その頃の私生活が本当のハーレム状態であれば果たしてブチまけただろうか。ブチまけた分の何倍もブチまけられない恥辱があったのだなと今ならばわかる。わかるぜダンと肩を叩きたい私の生な物心。