小便映画館に嫌なガスが充満である

1月16日、銀座シネパトスにて『狂い咲きサンダーロード』を観る。「燃やせ!俺たちの70Sジャパニーズ・グラインドハウス魂!」なる特集のトップだが。グラインドハウスとはアメリカ国内におけるエログロ暴力映画専門のいわゆる小便映画館のこと。70年代にはわが国内でもそれなりに盛り上がっていた国産小便映画館のヒット作をフィーチャーしたのが本企画でシネパトス20周年も記念しているとか。
シネパトスがポルノ専門館だった頃をちょろっと記憶している私も結構な年になるはずだ。モギリで「サンダーロード一枚」と列をなす男たちも皆くたびれ気味の中年サラリーマンが大半。考えてみたら本作の公開は80年である。30年近く前の青春バイオレンス映画を懐かしがって観に来る男たちがいい加減オッサンなのは当たり前。当たり前だが青春バイオレンスは遠くになりけりとは言いきれない低所得生活を今も引きずる私には何ともむずがゆいような。
本作を初めて観たのは80年代の半ばくらいか。千石、三百人劇場での似たような特集の中の一本としてか。オープニングの暴走族のミーティング風景の辺りから観たが当時は興奮したような。もう今は興奮しないのかと問われれば返答に困ってしまうが。暴走族の暴走行為は職業ではない。職業につくべき年齢になったチームリーダー達が看板下ろそうやと言いだすが若い隊員たちは冗談じゃないと反発して独立しようとする。
それまで巨大勢力だった連合軍の看板だけ強引に継承した草野球チームのようなミニ暴走族のリーダーが若き山田辰夫。80年代には山田辰夫のようなルックスと空気を持った気負った不良がたくさんいたような。山川豊とか加藤鷹とかそんな空気の元不良たちは皆今頃どうしているのだろうかと思った。少なくともジャパニーズ・グラインドハウス魂云々についてはもうあまり興味がないのかなとも。
山田辰夫のような不良像をもう一度回顧したがる今のくたびれた中年男たちは当時も今ひとつ不良になりきれなかった屁たれ群の残党である。しかしこの屁たれ群だけが今現在サンダーロードを決して悪い映画じゃないと根強く支持しているわけで。逆にサンダーロードをすっかり卒業してしまった元不良層こそが私を含む屁たれ群の敵なのではとも。
サンダーロードを遠く離れた卒業派は現在では山田辰夫のような若者を現場マネージャーに置いた回転寿司やファッションマッサージの幹部として享楽都市を牛耳っているはずである。サンダーロード周辺を四半世紀以上もウロチョロし続ける我々屁たれ群の最終戦争こそ石井聦亙に映画化を懇願。