住田家は普通の人々じゃないんである

12月19日、また近所にできた激安放出品ビデオの店を物色。『竹中直人の普通の人々』を百円で入手。発売はケイエスエスから16,274円。90年代初頭の作品らしい。当時セルでもレンタルでもあまり触れた人のいなかったはずの本作だが内容は濃い。作・構成、加藤芳一岩松了吉田戦車竹中直人。出演、竹中直人、布施絵理、ビシバシステム桐島かれん、荻野目慶子、本木雅弘ほか。ほぼ全編スタジオ録りのビデオ作品である。
全編録り下ろしといえば録り下ろしである。が、内容の多くは当時TBS深夜枠で放映中であった『東京イエローページ』の名物コーナーを豪華ゲストと繰り広げるもの。恐らく番組のファンだったチェッカーズ米米クラブスチャダラパーのメンバーが半笑いでビデオ出演している。私も番組のファンだったがなぜかビデオ録画していない。家主のエイチはしっかり録画してたのでそれを10年後位に観せてもらったが案外笑えなかった。それだけ時代性のある笑いだったのかとも思ったが。
多分時代性というよりそのキワモノ性に当時は歓喜していたのだろう。ドリフでも吉本でもとんねるずでもない異次元のコントが仮にも公共の電波にオンしている強引さが快感だったのだきっと。竹中演じる何の芸もない中近東の大道芸人に無反応な通行人たちの冷たい目。一生懸命やってんじゃねえかよと激して泣きくずれる竹中。それのどこが面白いのかと今でも思う。思うが何か笑っちゃう。
この何か笑っちゃう感覚の方がドリフや吉本やとんねるずよりも当時はまぶしかったような。何か笑っちゃう一派はその後敗退かといえばそうとも言えないような。現在の吉本芸人の中にはこちらの流れにたゆたう面々も多いような。そっちの方がスゲェと。そんなに不幸な人生をその後送ることになる演者もいなくてよかったなどと変なことを思ってしまった。つまりは年を取ってメロウになったのだ私の方だけが。
当時メロウな年齢にいるはずの出演者といえばマルセ太郎だが本作では寝たきり老人役を熱演している。あまりメロウではない。『東京イエローページ』に出演した最もメロウな大物ゲストは加山雄三であろう。家主のエイチは竹中が大河ドラマに出て急に物真似を認めだした加山雄三に不満気だった。メロウになった年寄りに何がわかるといったところだったか。しかし本作を強引にビデオ化した人々は当時メロウでも年寄りでもなかったのかとも。多分ビジネス誌化するまでの『宝島』のように提供者にはイキの良い当て馬が育てたかっただけなのかもと。