吉田栄作や江口洋介は五百円前後で

5月11日、市役所前の通りをプラついていると前から気になっていた古書店がようやく復旧していたので闖入。学習塾の1階フロアを利用したコミック、ゲームソフト中心の中高生向きの品揃え。都心にもよくあるスタイルの。塾長が客寄せも考えて開いたものなのかと。書籍もゲームもスカであったがCDコーナーの一角に90年代初めのイカ天ホコ天バンドの音源がワゴンいっぱいに放り出されていた。すべて同じ持ち主がまとめて処分したものと思われるその折り目正しきオーラに惹かれてあれこれ手に取る。ザ・ヒューズってオールナイトニッポンまで一時期担当してたな何か。クスクスや餃子大王などはまだ欲しがっている人も多いのではとも。ワゴンの中は百円から二百円である。吉田栄作江口洋介は五百円前後ではあるが売れるはずもないのは一緒。しかし当時も「売れるはずもないのは一緒」みたいなことはブームバンド側からタレントロッカー側に向けてぼやかれていたのではと。玉木宏ってギター上手いねとも。てなこと回想しつつ悲しみのセールワゴンを物色しているとニューエスト・モデルの『ソウル・サバイバー』が。時価百円。すぐさま会計を済ませて帰途。改めて聴き直すと当時「ソウルとパンクの融合」と評論筋で支持された本作に私なぞは見当違いの熱を上げていたのかなとも。ニューエストかっこいいわ、水木一郎みたい、アニメソング調でなどと興奮していたあの頃。ジーンズメイト以外のカジュアル洋品店が存在しない地方に生活していたわけじゃない。多分西村賢太と何度もすれ違っているはずのテリトリーを持つ漂泊の都民であった。それでも原宿や下北の古着屋を回ってニューエストみたいな格好をするつもりが結局巣鴨のマルジで物凄い色使いのポリエステルのアロハなぞ入手してこれでもいいかと。実際ニューエストのライブ会場に行くとメンバーに負けじと年代物のサイケモードに身を包んだ聴衆でいっぱいであった。私なぞウルトラ兄弟にまぎれ込むハヌマンのよう。当時のバンドブームの中でニューエストの立ち位置はハヌマンであったかどうか。貴重な映像がテレビ埼玉に眠っているはずである。『ソウルサバイバーの逆襲』発売時にテレ埼の音楽番組に出演した時のメンバーはアイドル然と終始ニコニコと愛嬌を振りまいていたが。これ絶対大阪に持ち帰ってライブの映像ネタに使うんだろなと私は思った。外タレ気取りじゃないのとも。それでも演奏シーンには震えた。オバQのサントラみたいでしびれるなどと。本作の裏番長、菊池成孔の存在なぞ知る術は当時も。