いつぞやそうしたディレタンティも

8月9日、図書館で『猟盤日記』戸川昌士ジャングルブック)を借りる。私の自宅から自転車で30分程の所に『来多狼』なるリサイクル商店がある。以前にフラリと寄った際にレコードコーナーに田端義夫フランク永井のオリジナルアルバムや80年代ディスコの編集盤が百円、二百円で無造作に放ってあったのが気になってはいた。が、その後そうした古物趣味が空っきし湧いてこなくなり月に一度上京して映画と劇場と音源と古本の観だめ買いだめもする気がしなくなってしまった。
地元の中古屋にはバンドブーム頃から渋谷系辺りまでのブツが割安でゴロゴロしている。おそらく同世代の元若者が何やら空しくなり手放したそれらのブツを私は一時ほくほくと買い求めていた。そうした店で入手した90年のセクシーアイドルのPVとツタヤで借りた同じタレントの熟女AVを自宅リミックスしたりかなり精力的な活動を続けてきたのだが。いつぞやそうしたディレタンティもしょぼくれ始めたよう。中年の危機かと。
地元の中古屋に若気のいたりをまとめて売り払った面々達は何か他に土俵を見つけてそちらで再び汗を流しているはずである。私もそろそろと次なる土俵を探しに出かけたつもりが『猟盤日記』とは。猟盤の続編、続々編は読んでいたが一作目をじっくり読むのは初めて。一作目では著者である戸川氏はマニアと交際しない業者でもない会社勤めの好事家として古物業界の腐蝕の構造を告発するが。二巻目、三巻目から読み始めた私はてっきり戸川氏も業者でありディーラーで関西では有名な人物なのかと。
平成元年から平成七年までの猟盤めぐりをルポした本作のエンディングは阪神大震災で中断せざるを得なかった1月17日以降の追記。当時戸川氏は四十代初め。当時の私は二十代終り。その90年代半ばには70年代の若者文化が世代を超えて広く面白がられていた。今もその余波で地元にツタヤにも東映バイオレンスポルノ作品が並んでいるが。走る列車の窓から眺める景色のように今が丁度振り返りどきという時期はもう過ぎた感が。でもふり返れただけでもよかったじゃないかとも。川谷拓三などはあの頃存命であれば各種イベントに引っぱりだこだったろうし話したいことも山ほどあったはず。
私がまだもう少し掘れないかと願うのはピンクレディやキャンディーズの数限りない亜流アイドルと亜流ポルノ。ピンクレディもので『透明人間、犯せ』以外にもう一本か二本作られていたような気がするのだが。どっちかといえばそっちが俺の本当の青春と手を上げる五十男が私は好きだが。