レコードは物好きなつもりでいる私も

8月12日、ツタヤで『Gメン75』のDVDを。6月28日に亡くなったセーラ・ロウェルさんが観たくなって。『新Gメンの罠はヌード金髪死体』の回でシンガポール警察潜入捜査官、マリコ寺岡刑事役でセーラは初登場するのだが。当時のセーラはまだマスコットガール扱いというか。
ホテルのプールサイドをビキニ姿でちょこちょこ走り回って犯罪組織と汚職刑事の密会現場を盗み撮りする小娘役。とってつけたようなB級アクション女優ぶりだが。そもそもGメンの固定ファンは小学校高学年くらいが中心だったのではないかと。丹波哲郎若林豪をはじめ男優陣は劇画チックにとことん男ムサク描かれ女優陣は基本的にマスコット。格闘技の会場でラウンドガールにお下劣な野次を飛ばす小学生たちと大差ないファン層が当時のセーラさんの周りにとぐろを巻いていたと思われる。
ファンなのに何だって素行が悪げだの股間が臭げだの執拗な侮蔑を繰り返してくるのか。大体まだ精通も始まっていない餓鬼どもに何故にそんなこと言われなきゃならないのか。セーラさんの心痛ぶりが今になって伝わってくるよう。Gメンあまり熱心に観なくてよかったなと。
シンガポールを舞台にした本作は国際犯罪組織が盗んだ宝石を日本に持ち出し転がすというわりとあっさりした話を2回にわたってちびちび展開する。おそらくロケ地の観光スポットをすべて画面に収めるために。そのためだけにロープウェイで犯人を尾行したり市街地でカーチェイスを始めたりする。そのわりには「いきなりナイフが飛んでくる土地柄だ」などとあっさりとスラム呼ばわり。まずとても観光する気になれない名所があくまで流れで紹介される。
当時のGメンを熱心に観ていた小学生は今頃こうした魔都に血まなこで出かけてそれは好き勝手な酔狂を行っているだろう。もう少し熱心にGメンを観ていれば今の私のタマ無しぶりもまぬがれたかもしれない。が、私のタマなんか最早どうだっていい。セーラさんへのはなむけに選んだGメンは大失敗であった。
私の記憶の中の同じ時期のセーラさんといえば『スター千一夜』出演の際、やはり水着姿でのインタビュー風景。司会の坂本九にレコードも出してたよねと問われあまり話題にならなかったバンド歴を語っていたセーラさん。そのレコードは物好きなつもりでいる私も入手していない。確か同時期に人気のあったプラスチックスやスパイのようなニューウェイヴ風歌謡だったかと。しかし当時のセーラさんはまだ弱冠二十歳。内面的には大人も大人だったと思いたい。じゃなきゃやってられなかったはずだと。