まだハッテンバ的な体質も残って

4月17日、上野オークラ劇場にて『淫らなお姉さん たくさんかけて!』を観る。監督、池島ゆたか。80年代末頃のエクセス作品で主演は岡崎結由。当時人気のAV女優。芸名からしてあの頃のアイドル歌手のフェイクだし眉毛も雪ダルマ状にくっきりと濃い。男優陣もどこか尾崎豊杉山清貴のようなルックスでメイクも入念な上に高級ランジェリーまで身に付けていてやはり皆どうかしてたような。山本竜二がクールな大学助教授役で登場する。ちゃんと芝居しているだけで何だかおかしい。淫らなお姉さん役の岡崎結由は医大生で助教授と同級生とアングラ役者の三人と同時に交際している。助教授はもちろん医大生も実家は大病院の富裕層だが三十過ぎのアングラ役者もテレビドラマのレギュラーが決まったばかりの期待株でどれを選んでも申し分ないのだがと設定がやはり時代か。トレンディドラマにちょっと出演している団優太のようなその男は当時の女子大生の視点では大学教授や大病院の跡継ぎ息子と対等だったのだ。確かにあの頃の小劇場の役者は今より堂々としていて俺様揃いだったがそれだけ可能性があったのかも。可能性って何だいと問われると困るが今現在あの頃のアングラ役者の匂いを感じる原田泰造ユースケ・サンタマリアを観ていると俳優業以外のどんな世界でもかならず成功しそうな気がする。じゃあ可能性とは営業力のことかいと問われると少しは困るがやはりそんなものかと思う。上野オークラ劇場はピンク映画の都内最後の砦として生まれ変わったよう。上映中も若いスタッフが場内をパトロールしていて煙草を吸う観客や不審な行動をとる観客は退場させられる。私の座席の近くをゴスロリ風の老女と女子プロレスラーのようなフィリピ―ナがうろうろしている。まだハッテンバ的な体質も残っているのかと思えばロビーには風紀上カップルでの二階席のご利用はお断りしますとの貼り紙が。ゴスロリ老女とフィリピーナはパトロールの目を盗んでは退屈そうな観客に二階で遊ぼうよとなどと小声で話しかけている。私の方にも勧誘しにきやしないかと鳥肌が立ったがこの体感ゲームすらも今や風前の灯なのかとも。入場料千六百円で朝まで過ごせる劇場を常宿にする観客もいるよう。日雇い時代に知り合ったゲーセンで寝泊まりする男たちと同じ濃度の体臭があちらこちらからする。劇場内に80年代末頃まで健在だったコインシャワーを復活させたら毛穴の奥までタイムスリップできそう。人は皆やがておさまるべき所におさまると言うが私の場合はどうやらこんな所のようで。