10年後には連ドラで再ブレイク

9月2日、『台風クラブ』(85年 ディレクターズ・カンパニー)をDVDで観る。NHK連ドラ『あまちゃん』を何だか相米慎二っぽいなぁ、特に『台風クラブ』っぽいと思いつつ毎朝観ていたので。具体的に『あまちゃん』のどこが相米的なのかといえばまず薬師丸ひろ子小泉今日子相米作品の最初と最後のヒロインだし音楽の大友良英相米作品育ちだ。『台風クラブ』の地方と東京の二元中継的設定は『あまちゃん』にもある。が、何より本作が『あまちゃん』を連想させるポイントは東京編のガイド役に起用されているのが若き尾美としのりだということ。公開当時は子役時代の面影を残しつつ大学生のナンパ師を演じる尾美としのりに嫌な感じがした。これで一皮ムケてやるといった構えが見えて少しふて腐れた感じが。だがよく観れば尾美としのり工藤夕貴を下宿に連れ帰って一息入れたところですぐ逃げられてしまうのだった。原宿のブティックにてバッチリ似合ってるよなどと褒めている工藤夕貴の赤いドレスもよく観るとプレゼントしたものじゃなく地方少女の渾身の買い物に付き添ってあげただけのよう。お前なに家出してきたのなどと工藤夕貴と目を合わせず背中に回って束ねた長い髪をいじりだす尾美としのりはいやらしい。が、いやらしいのと内心思われつつ逃げられる尾美としのりに私はホッとした。一皮ムケそこなってよかったじゃないのと。02年に刊行された『映画芸術』の相米慎二特集には相米組の常連俳優からの寄稿が集まっているが尾美としのりは欠席。その頃あまりかんばしくなかったのか。10年後には連ドラで再ブレイクというか初ブレイクするとは思いもよらず相米さんねえと布団かぶっていたかもしれない尾美としのりはこれで結果オーライか。尾美としのり爆笑問題田中にも通じる東京の田舎者然とした風貌。地方から来た若者が最初に頼りに感じて最初に見限る優しい人。優しい人のどこが悪いという時代の気分は今少しあるような。80年代から時代の止まった場末の喫茶店で粗末なナポリタンを実に美味そうに食べる昭和40年代男に今世間の風は案外暖かい。もう普通でいいじゃないか、あり合わせで今しばらくはという時代の気分に息を吹き返した尾美としのりの今後はどうなっていくのか。正直あまりいい年のとり方をしているとは思えない相米監督作品育ちの青春スターたちの中では結果的には安定期を迎えたように見える尾美としのり。同じ子役出身であまりといえばあまりにいい年のとり方をしているとは思えない坂上忍との共演作など個人的には観たいが。