本作はいまおかしんじ版あまちゃん

1 月31日、上野オークラにて『感じるつちんこ ヤリ放題!』(OP映画)を観る。監督、いまおかしんじ。本作は今やピンク映画の巨匠になりつつあるいまおかしんじの最新作。ヒロイン園子役に涼川絢音を迎えて不可思議な下町人情グランギニョールを展開する。主人公、園子は夫とハイキング中につちんこの襲撃に遭う。つちんことは古来より学術的研究が進められるヘビに似た未確認生物。園子はその研究家にたぶらかされたり夫の浮気相手だった女子高生に生オシッコ代百万円を要求されたりしたあげく連れ出しスナックで働くハメに。そこで知り合った男性客の良男もまた怪しい。「ぼく、50年前に一度死んでるんです」とオタク男の友達募集のような戯言を真顔で語る良男役の男優はどこか若き日の尾美としのりに似ている。かと思えば女子高生役の月本愛は有村架純に似ているし、そもそもヒロインの園子からし能年玲奈に似せているよう。本作はいまおかしんじ版『あまちゃん』なのだ。『あまちゃん』は震災を正面から描きつつも原発事故に対してはまるっきりスルーしたという批評もあったが。私はその部分も橋本愛の家庭を通して描かれていたと思う。あれ程の田舎町で隣近所にお構いなく自分のところだけクロワッサン流の衣食住を楽しんでいるのはすなわち原発村である。そうした庭にもまた複雑な悩みがあってというクドカンの切り口に対し本作のいまおか監督は。放射能で巨大化したらしいトカゲのおっさんの様な半獣半人のつちんこが登場しヒロインと格闘する。なんとなく『ウルトラファイト』や『クレクレタコラ』を思い出す脱力怪獣コントになだれ込むくだりにOP映画独特のどうしようもない至福感が。ロビーにも客席にもさすが上野オークラといった感のモノホンの男娼が徘徊すれば映像学院生らしき若者もいる。もちろんサラリーマンも労務者もこの場を根城にした老人会も皆昼の日中に成人映画を楽しみにやってきている。このどうしようもない至福感に満ちた世界を壊したくないとまでは思わないが。思わないが残せる限りは残しておきたい。と、並映された旧作『いくつになってもやりたい男と女』における65歳の主演コンビの爆笑物の艶技に思った。本作 『感じるつちんこ ヤリ放題 !』によってまた一歩ピンクの巨匠に近づいたいまおか監督は同時にまた一歩世界の檜舞台から遠のいた感。他人事ながらもその職人魂に一票を投じたく遅まきながらもよいお年を。