今観ても充分スマートでカッコいいと

5月24日、『RCサクセション AT BUDOHKAN』 (ユニバーサル ミュージック)を観る。本作はRCサクセションの第一回目となる日本武道館公演の模様を収めたもの。81年12月24日のこのステージは翌年フジテレビで『愛しあってるかい? RC at 武道館』という一時間の特番として放映された。番組では冒頭に「あなたは愛しあっていますか」「愛しあっている」「愛しあっていない」「よくわからない」などと国勢調査のパロディのようなキャッチが施されお茶の間受けの真逆を狙った感があった。大人がポカンとする痴態を演じればそれがロックになった時代の気分はあったにせよRCサクセションの面々はまだ中学生の私にはけっこうな大人であり当初はそれが異様にも思えた。中学時代に誰しも撮りためる自室でモデルガンを構えてたり駐車場で他人のバイクに股がってたりする青春の痴態写真の私版はどれも清志郎気取りの自前メイクでもだえている。これと同じ物が今も郷里の同級生のアルバムに一枚や二枚残っていると思うと裸足で夜の街を駆けて行きたくなる。が、RCの最盛期を収めた本作に向き合うことは決していたたまれない訳ではない。今観ても充分スマートでカッコいいとあらためて思う。ホーンセクションのブルーデイホーンズにせよおじさんバンドのRCを更におじさんがバックアップしているように当時は感じたが今よく観れば皆キレキレの青年であった。前年サントラに参加している映画『翔んだカップル』は不動産屋の失策で一軒家にダブルブッキングされた高校生の男女の同棲劇。大人になるまで待てないような痴態の限りを子供のうちから見せつけるどぎつい戦略はそれでも案外カレッジフォーク向きにお行儀よく受け入れられた。RCやキティフィルムに影響された当時の若い男女は案外お坊っちゃんお嬢ちゃんだったのだと本作の観客席を観て気づく。薬師丸ひろ子のファンって表面的には突っぱってても何だか変、じゃなくて何だかいい連中だったなと。RCサクセションは本来カレッジフォークに位置付けても問題ないのではないか。ヴィレッジ・シンガーズの特番を組んでるつもりで制作に携わっていたスタッフも局内にはいたのではないか。当時親交のあったアナーキーはもっと大人に聴いてもらいたい、21の俺達の作った歌をなんで同じくらいの年の奴が聴こうとしないのかと悩みあぐねていたようだったがRCはこの時点では同窓会なぞ裸足で逃げ出したい我が世の春であったよう。