ともすればこれが見納めという主旨も

7月22日、鹿嶋勤労文化会館にて岡林信康弾き語りライブ2017を観る。フォークの神様こと岡林信康は3年前より弾き語りツアーを始めた。きっかけはデビューの頃からの付き合いだったカメラマンの突然死だとか。自身にまだやり残した仕事はあるかと問い質した後にもう一度「全国の隠れキリシタンならぬゥ」隠れ岡林ファンと触れ合いたいと決意したそう。やあやあと手を振りステージに登場する立ち姿にはキャリア50年の華が。もう一人のフォークの神様、高田渡が演奏を始めるまではその辺のどうしようもないおじさんにしか見えなかったのとは対照的。本公演のチラシには ″「山谷ブルース」「チューリップのアップリケ」「自由への長い旅」…新旧さまざまなあの名曲をお楽しみください″ とある。最低でもこの3曲は演奏するということだろう。興が乗ればもっと懐かしい曲も演奏するし今回だけはエンヤートットは止めておくということだろう。ともすればこれが見納めという主旨もちらつかせてはいるものの宮崎でははっきりと ″岡林信康、最後の宮崎公演″ と告知されたとか。折しもこの日、7月 22日は岡林信康の誕生日。会場は暖かい拍手に沸くが。「71ですよ、くそ面白くもないっすわ」とぼやけばさらに会場は沸く。「僕の唯一のヒット曲」である『山谷ブルース』の歌い出しにも拍手とどよめきはそれなりにあったが。「他の会場ならここでドカーンですよ、もう一辺行きましょ」と半ば強要されつつもドカーンと。最新作である初孫の奏太くんに捧げる「じいじの歌」は忌野清志郎の『パパの歌』同様にオールドファンからは好々爺なんてイメージじゃないと不評だった。が、最近になって常連客から突然涙が出るほど感動したと打ち明けられ「感動なんてそんなあやふやなものかも」と気づいたと言う。自身がディランにならってバンド志向になりはっぴいえんどと共にツアーに出ると「多くのファンを失ってしまった」道行きの発端は「体中に電流が走ったような」気がしたザ・バンドのエレキサウンドだった。が、今思えばそれも何かの勘違いだった気もするとか。もはや半世紀近く昔のことでもはっぴいえんどという名詞が出ると会場には妙な緊張感が通り過ぎたが。アンコールには公約通り『自由への長い旅』をスタンディングで演奏する。ギターの位置は心做しかだらりと落武者風にやや低め。それでも見事最後まで歌いきる。終演時刻も夕方5時とシニア対応。「いい誕生日になりました」と悠々と手を振り去って行く後ろ姿はやはり神々しかった。