期待の新鋭の決定打になりそうな

10月17日、阿部共実 著『月曜日の友達①』(小学館)を読む。前作『ちーちゃんはちょっと足りない』で漫画界の本屋大賞にあたる″このマンガがすごい!2015オンナ部門1位″を獲得した阿部共実の最新作。現在も『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて連載中。期待の新鋭の決定打になりそうな本作にはカバーデザインからしてそれらしき引力が。画法も構成もこれまでとは映画学校の卒業制作と商業映画ほどの差異が。などと書いては何言ってんだ文句無しのメジャー畑だぞと怒られそうだがはっきりと商売物の風格が。本作は地方都市に住む中学新1年生たちの青春群像劇。自分の描きたい漫画しか描かない姿勢を貫くも結果スルーされるだけではない稀有な作家、阿部共実がメジャー進出に選んだ題材がローカルな小さな恋の物語というのは意外でもなく納得させられるでもなく。つまりは何だかよくわからないまま始まりやがては終わる青春の日々を真正面から描きたいのか。本作には五十男の私ですら心のアルバムを再び開かされる青春の一頁が一杯。あまりたいしたことないオタクとヤンキーだけが集まる地方の平和な学園という設定は私の思春期にも重なる。第1話で主人公、水谷茜は知り合ったばかりの同級生、月野透に「俺は超能力がつかえるんだ。俺はこんな狭い世界に収まる気はない!どおおおおん!」と自己主張される。同じようなことを打ち明ける級友が私の十代にもいたが。まさか誰にでもそんな戯言を話すわけもないだろう、相手を選んで自分を大きく見せるのはオタクもヤンキーも同じかと不快に思った。が、つまりはどちらからもなめられてたのかと今頃気づく。第3話ではその月野透がふいの暴力に屈している姿を生まれてはじめての友達、水谷茜にある距離を持って目撃されてしまう。初期の『ダウンタウンガキの使い』で松ちゃんが告白した思春期、デート中に不良にからまれるも勇気を出して彼女をかばい話がつくまでここで待っとけと立ち去るそのケツを思いきり蹴られたエピソードを思い出す。青春は痛みの連続だったしわざわざ振り返るほど美しくも輝かしくもなかったのでは。それでも本作に散りばめられた青春の美しく輝く一頁には田舎の中学高校の文化祭のポスター画にはない気迫のようなものが。そこはやはり青年誌である以上自分大好きな青春貴族たちが否応なしに仏頂面の平民へと「成長」させられていく姿までは描ききるという責任感だろう。本作は漫画家、阿部共実が何かひとつの覚悟を決めていくまでのダイアリーになりそうな予感。