すかんちにとってはささやかながらの

2月10日『すかんち CD&DVD THE BEST 軌跡の詩』(05年 ソニー・ミュージック・エンタテインメント)を聴く。本作はすかんちの90年のデビューから96年の解散までに発表した作品から再編したもの。映像作品を含めたこのBESTシリーズは三社共同で全14タイトル。他には越路吹雪テレサ・テンもあれば小比類巻かほるやLOOKもあるが何よりフィンガー5がある。すかんちにとってはささやかながらの殿堂入りと呼べよう。すかんちの音楽性は本作に寄せたローリー寺西(当時)の解説文にあるように「70年代ロックへのオマージュとコンピューターを使った最新式の打ち込みサウンド、奇想天外で奇天烈なアレンジ、作り込まれた分厚いコーラスとノスタルジー溢れる歌謡曲を合体させた」ものである。自身が関心を持つ素材をゴッタ煮したものを自分発のオリジナル料理と呼べるかどうかはそれが意外と合うという発見があるかだが。あえて堂々バレバレの贋作で大舞台に登場する厚顔こそキッチュで格好良いという時代の気分も当時あったよう。「ZEPPELINとフィンガー5麻丘めぐみとQUEENとを合体させた」音楽性もさることながらローリーの詞世界もまた70年代コミック文化の影響下にあるよう。『ペチカ』のなかの「卒業式が終わってしまえば ライバルたちが集まる 学舎で マドンナをめぐって チャレンジのフェスティバル」というくだりもいかにもだが。こんな恋愛観も昨今いかがなものか。マドンナを狙ってストーカー行為を繰り返す輩を見上げた度胸だと仲間内で応援していた黒歴史はアクションカメラじゃなくて盗撮だろうと吊し上げられるべき過去のあやまちである。が、すかんちの詞世界は肥満児でいじめられっ子だった寺西一雄少年の見続けた淫夢なのだ。子供ばんどの『あんたはまだ子供だよ』を私は国産ハードロックの傑作と思っていた。が、後にロカビリーのヒット曲をハードロック調にカバーするアイデア自体がいただきものと知る。されど時空を超えるその名カバーの生みの親は他ならぬこの俺という妄想はすべてのロック小僧のわずらう虫歯のようなもの。ROLLY(現在)自身もおそらくあれもこれも俺が初めて掘り起こしたというエビデンスのない自信に胸を張っているだろう。そのROLLYは今とてもいい立ち位置にあるのではないか。かつての好景気時代のおばさんになぜかコロッケというタレントが愛されたように。今のROLLYは富裕層のロックなおかあさんに愛されていそうでそれゆえの殿堂入りとも言えるのか。