ジャケ写のうつろな表情にも苦労が

5月27日、ツタヤの演歌コーナーにて買い求めた森山愛子の新曲『約束』を聴く。今月のイチ押しといったふうに目立つ棚にごっそりディスプレイされていたので森山愛子ってもうそんな中堅層なのかとおののく。私は以前に巣鴨の演歌系CDショップの店頭キャンペーンに来ていた森山愛子を見たことがある。森山愛子は森山良子の娘だというガセを信じていたのでなるほど近くで見てもお母さんそっくりじゃないのなどと勝手に親しみを覚えたが。鼻の先に玉の汗をかいて懸命に歌う姿を私は脳裏に焼きつけた。ま、何かの足しになればと。そのくらい若く健康的な色香がそのときの森山愛子にはあったのだが本作に付いているプロフィールはいきなり1月27日栃木県宇都宮市生まれから始まる。何年生まれとは公表しにくいくらい遅咲き組になってしまったということか。同じ巣鴨のショップの店頭キャンペーンでデビュー曲を歌っていた氷川きよしも観たことがある。氷川きよしは今年35歳。森山愛子はもっと若いはずだが三十路近くまでヒットがないのは今は演歌の業界でもイメージよろしくないのか。ジャケ写のうつろな表情にも苦労がしのばれると言えなくもないが。デビュー時の股旅モノの衣装に身を包んだ忍者ハットリくんのような明るくからりといった様子は今はない。田舎じゃもうフワフワしてられぬお年頃への世間の視線を受けた青女の憂いを浮かべた表情である。いやヘアメイクが同世代の企画モノAV女優のそれに近く変な哀愁があるのだ。森山愛子も哀愁で売るご時世かとしんみりする。本作『約束』は韓国人気ドラマの挿入歌として有名な曲のリメイク。さらにカップリングは『イムジン河』である。「愛子のイムジン河」などと明るくからりとカバーするわけにもいかない未だ問題作の『イムジン河』の方が私は気になった。“誰が祖国を二つに分けてしまったの”という今もひやりとその場の空気を変える一行を元ハットリくん森山愛子が歌うとどうなるか。『パッチギ!』の急迫感にはおよばないと。およばなくてもいいんじゃないかとも思う。うっかり話題になれば長く歌い続けたい大切な曲ですねくらいのことは言わないわけにはいかなくなるのだし。ある種のストリップティーズなのだ森山愛子の『イムジン河』は。いやはや危ないところであった。が、私の席からはちょっと見えたような感。焼きつけておこう。何やら久方ぶりの演歌熱がまた戻ったようである。森山愛子と握手できるなら『約束』はあと20枚は変えるかも。迷走し始めてから飛びつくなんてオセロ中島のにわかファンみたいでもあるが。