2015-01-01から1年間の記事一覧

勿論一般のお客様にも応援して欲しい

9月24日、史群アル仙 著『臆病の穴』(秋田書店)を読む。本作は秋田書店コミックサイト『Championタップ!』に14年11月から15年5月まで連載された。“ノスタルジックな絵柄で、人間の心の深層を抉る「愛」の短編を14本収録”と裏表紙にある通り吾妻ひでお風の…

このマンガはスゴイのかも知れないと

9月20日、阿部共実 著『大好きが虫はタダシくんの 阿部共実作品集』(秋田書店)を読む。帯には“宝島社 このマンガがすごい!2015第一位オンナ編”とあり前作『ちーちゃんはちょっと足りない』で注目を浴びた著者の初の作品集になる。私はその『ちーちゃんは……

といっても母娘で食い物にされたのは

9月14日、山田太一 著『読んでいない絵本』(小学館文庫)を読む。本書は脚本家の山田太一が89年から08年までに発表した短編小説、舞台の戯曲、ドラマの脚本などを収めたもの。表題作『読んでいない絵本』を始め三作の短編小説はいずれも心理ホラー的要素の…

かしぶち哲郎作詞作曲によるこの曲を

7月25日、岡田有希子『All Songs Request』を聴く。本作はアイドル歌手、岡田有希子が残していった全ての音源の中からファン投票により選曲された17曲を収録したもの。ユッコといえば竹内まりやによるデビューからの三部作、『ファースト・デイト』、『リト…

働く女性に贈る知的エンタメ漫画と

7月20日、よしながふみ 著 『愛すべき娘たち』(白泉社)を読む。本作は『メロディ』誌に02年7月号から03年10月号まで不定期に掲載されたコミックス。大人の女性向けコミックスと呼べばよいのか。私の感覚からすればレディースコミックというものは性描写の…

70年組の青春はいま少しそっとして

7月15日、クリス松村 著『「誰にも書けない」アイドル論』(小学館新書)を読む。本書はアイドル歌謡の解説者としても知られるタレントのクリス松村が70年代末から80年代末を中心に展開するアイドル論。著者がアイドル歌謡に異常に詳しいことは以前から知っ…

今後に充分な警戒が必要である

7月9日、中崎タツヤ著『もたない男』(新潮文庫)を読む。本書は漫画家、中崎タツヤが自らの行き過ぎた断捨離癖を赤裸々に告白したエッセイ集。自作の漫画同様に物腰やわらかにぼそりぼそりとありていの日常を語っているかに見えてよくよく聞けばかなり異常…

その割に表立った交流があまりないのは

5月9日、谷川俊太郎 対話『やさしさを教えてほしい』(朝日出版社)を読む。本書は81年に奥川幸子、中島みゆき、永瀬清子、ぱくきょんみ他6名の女性と谷川俊太郎との対話をまとめたもの。それぞれソーシャルワーカー、シンガーソングライター、詩人と立場は…

最早吹けば飛ぶような劣化状態にある

5月3日、山下浩 監修、椹木野衣 解説『山下清 作品集』(河出書房新社)を読む。本書は「放浪画家」「裸の大将」として知られる山下清(1922―1971)の残した貼絵、油絵、ペン画などの作品群と放浪日記の一部を収録した山下清ワールドへの入門書である。「テ…

ほぼ一年がかりで本書は生まれた

4月17日、吉田日出子『女優になりたい』(晶文社)を読む。本書は女優、吉田日出子が93年に40歳を目前にこれまでの女優業を振り返る語り下し。その語りを構成したのが同じ演劇人の津野海太郎を始めとする晶文社のスタッフ。ほぼ一年がかりで本書は生まれた。…

ネタを生きながらも自己流に再編集

4月14日、いがらしみきお著『今日を歩く』(小学館 IKKI COMIX)を読む。著者が今日まで15年以上も続けてきた散歩を通じて「日常を哲学するエッセイコミック」である。著者の過去作と比べるとちょっとした新境地の感。パワー全開の大ネタとしては本書と同じ…

何だか蛭子さんに似てるなと思ったが

2月18日、横尾忠則 著『温泉主義』(新潮社)を読む。本書は画家、横尾忠則が05年11月より07年12月まで雑誌に連載していた紀行文を一冊にまとめたもの。そもそもが温泉嫌いだった著者が仕事がらみで銭湯協会にかかわった際に「銭湯の次は温泉に行って、それ…

グランドホテル形式と呼ばれる作劇を

2月3日、テアトル新宿にて『さよなら歌舞伎町』(14年 映画「さよなら歌舞伎町」制作委員会)を観る。監督、廣木隆一、脚本、荒井晴彦。新宿歌舞伎町のとあるラブホテルを舞台にそこで働く人々、訪れる客、性風俗関係の仕事を持ち込む常連客らのそれぞれ複雑…

いじられキャラのまま30年もいじられ

2月11日、蛭子能収 著『ひとりぼっちを笑うな』(角川ONEテーマ21)を読む。本書は漫画家で俳優業、タレント業もこなす蛭子さんによる人生指南書である。あの蛭子さんに人生指南書を授かりたい人間なんて世の中にいるのかと思う。が、普通の人間が超一流…

と、いうストーリーだけ書き出すと

2月22日『虫と歌 市川春子作品集』(講談社)を読む。本書は06年10月から09年12月のあいだにアフタヌーン誌上にて漫画家、市川春子が一話完結で発表してきた作品を一冊にまとめたもの。収録作は表題作の他に『星の恋人』、『ヴァイオライト』、『日下兄弟』…

公開当時にはなんだかなあとも

12月16日、『あ、春』(98年トラム)をDVDで観る。監督、相米慎二。01年に死去した相米慎二の遺作は本作の次に撮った『風花』(01年ビーワイルド)である。が、『風花』は劇場で一度観たきりDVDで観返す気がしない。何やら具合の悪そうな映画だと私は…

果たしてその回答はただそのままで

12月9日、『深沢七郎ライブ』(話の特集編集室)を読む。本書は作家の深沢七郎が87年に死去した翌年に親交のあった雑誌『話の特集』の編集者、矢崎泰久を中心に限定出版されたもの。その内容は随筆と対談のベストセレクション、色川武大、尾辻克彦、野坂昭如…

しかし、ふがいないといえば

12月3日、青山円形劇場にて『夕空はれてーよくかきくうきゃくー』を観る。作=別役実、潤色・演出=ケラリーノサンドロヴィッチとチラシやパンフにはクレジットされている。潤色というのは色どりを添えるなどの他に事実どおりでなく面白くするという意味があ…

安藤サクラならもらえるものは

11月29日、有楽町スバル座にて『0.5ミリ』(13年 ZERO PICTURES/REALPRODUCTS)を観る。監督、脚本 安藤桃子。本作の主人公山岸サワを演じるのは監督の実妹でもある安藤サクラ。エグゼクティブ・プロデューサーに奥田瑛二、劇中登場する手料理を監修するフー…