2016-01-01から1年間の記事一覧

本作がセールス的に急上昇していたら

11月19日、小沢健二『球体の奏でる音楽』(東芝EMI)を聴く。佐々木敦の『ニッポンの音楽』の後半「渋谷系の物語」の章を読み、96年に小沢健二が同じ東芝EMIの浅川マキのバックを務める渋谷毅と川端民生をゲストにジャズアレンジのミニアルバムを発表…

もっと言えば後半の後半、もっと

11月17日、佐々木敦 著『ニッポンの音楽』(講談社現代新書)を読む。本書は70年代からの日本のポピュラー音楽史を十年区切りに振り返り物語化したもの。物語とは『成りあがり』や『GLAY物語』のように独自の視点で物語るニッポンの音楽の寓話のこと。だ…

エビス本は出せばそこそこ売れる昨今

11月10日、蛭子能収 著『パチンコ 蛭子能収初期漫画傑作選』(角川書店)を読む。本書は漫画家、蛭子能収のデビュー作『パチンコ』を含むガロ時代、つまり原稿料の出ないマニアックな漫画誌にみずから持ち込んで描かせてもらっていた頃の入魂の初期作品を集…

もう飛躍しない、ジャンプしない

11月8日、渋谷TOEIにて『ぼくのおじさん』を観る。監督、山下敦弘。前作『オーバー・フェンス』をテアトル新宿で観た際、原作小説のファンなのか50代、60代の壮年層も多かった客席をこれまでの漫才調ではなく人物の佇まいや会話の間合いで笑わせている山…

貧者と貧者が尻の毛までも毟り合う

9月3日、平田オリザ 著『下り坂をそろそろと下りる』(講談社現代新書)を読む。本書は前作『わかりあえないことから―コミュニケーション能力とは何か』のヒットを受けて同じ新書シリーズから出たもの。帯文には“あたらしい「この国のかたち」”とタイトルよ…

プライベート盤のゆるさを全面に

8月24日、『悲しき夏バテ』布谷文夫(ユニバーサルミュージック)を聴く。本作は73年8月、大瀧詠一プロデュースにより発表されたブルース歌手、布谷文夫のソロデビュー作。内ジャケには布谷文夫とレコーディングメンバーらが草野球に興じるスナップ写真が並…

夏目漱石の言わずと知れた原作小説を

8月10日、大和田秀樹 著『坊っちゃん』(日本文芸社)を読む。“日本文学史上、最も有名かつ多く読まれた名作を漫画界随一の鬼才が漫訳したらこうなった!”と帯文にある。夏目漱石の言わずと知れた原作小説を「漫訳」した大和田秀樹なる著者には『機動戦士ガ…

そうしたいびつな笑いも本書には

8月7日、蛭子能収 著『ヘタウマな愛』(新潮文庫)を読む。本書は02年8月 KKベストセラーズより刊行されたものを文庫化した所謂タレント本。有名人が夫や妻との闘病記や哀悼の思いを綴った著作の類を蛭子さんも出していたのを私は知らなかった。が、蛭子さ…

もう何もするなと、只じっとしている

6月4日、平田オリザ 著『わかりあえないことから』(講談社 現代新書)を読む。本書は劇作家であり演出家でもある平田オリザが近年大阪大学コミュニケーションデザイン・センター客員教授となり様々な現場でコミュニケーション教育に携わってきた体験から“コ…

が、今になってあの世にもサウンドが

5月17日、BABYMETAL のアルバム『METAL RESISTANCE』 (トイズファクトリー)を聴く。FMラジオにて全米40位内に入る『スキヤキ』以来の快挙と紹介された本作に少なからず反応した私はその足でCDショップに走った。私がそれ以前ショップに走ったのは椎名林檎の…

人生に弱ってる時にフトらくがきして

5月10日、おくやまゆか 著『たましい いっぱい』(株式会社 KADOKAWA)を読む。本書は月刊コミックビームに掲載された著者のマンガを初めて一冊にまとめた「破格の処女単行本」。マンガ以外にも絵本作家、挿絵画家として活動する著者は本書で第19回文化庁メ…

それでもけだし名曲は名曲である

5月5日、なぎら健壱『ベストアルバム 中毒』(95年 FOR LIFE)を聴く。本作はフォークシンガーのなぎら健壱が73年から95年までに残した音源の中からお笑い寄りの企画盤を中心に編集したもの。“再発発起人”として高田文夫がクレジットされている。そもそも高…

この珍事を見逃さない編集者の眼力に

3月1日、山田太一 著『S先生の言葉』(河出文庫)を読む。本書は脚本家の山田太一がこれまで新聞雑誌等に発表してきたエッセイの中から企画・編集をフリーの編集者に委ねたベストセレクションのこれが第一弾。まえがきには「私はいま八十一歳で、一応おだや…

この珍事を見逃さない編集者の眼力に

3月1日、山田太一 著『S先生の言葉』(河出文庫)を読む。本書は脚本家の山田太一がこれまで新聞雑誌等に発表してきたエッセイの中から企画・編集をフリーの編集者に委ねたベストセレクションのこれが第一弾。まえがきには「私はいま八十一歳で、一応おだや…

そのアットホームな様子にほっとする

2月9日、新宿K's cinemaにて『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』(15年 シネフィルム)を観る。監督、遠藤ミチロウ。本作は11年3月初めに遠藤ミチロウの還暦記念ライブツアーを収録したDVDの中のミニドキュメントとして制作開始された…

へなちょこでいいのだと言いたい

2月7日、つげ忠男 著『成り行き』(ワイズ出版)を読む。本作の著者、つげ忠男はつげ義春の実弟にあたる。兄、つげ義春のようにブームに巻き込まれることもなく断続的に描き続け固定ファンを抱えている。本作は56年以上にもなるその活動の集大成になるかもし…

伊藤克信が全篇いい味出し過ぎの

1月25日、新宿ピカデリーにて『の・ようなもの のようなもの』(16年松竹)を観る。監督、杉山泰一。本作は11年暮れに急死した映画監督、森田芳光の出世作『の・ようなもの』を弟子にあたる杉山監督が同じく森田組出身の堀川正樹の脚本でリメイクしたもの。3…

言わば日本の「青春」は明治生まれで

12月14日、金子光晴 著 『現代日本のエッセイ 絶望の精神史』(講談社文芸文庫)を読む。本書は1965年、昭和40年に明治百年、戦後二十年と呼ばれひと段落した時代的気分のなかで詩人、金子光晴が七十年の人生と世相を照らし合わせ振り返ったエッセイ集。当初…

その不思議はもう少しそのままにして

12月20日、町あかり『もぐらたたきのような人』(ビクターエンタテインメント)を聴く。今年の夏に新宿のディスクユニオン昭和歌謡専門店にてアルバム『ア、町あかり』のフライヤーを入手して以来その存在はずっと気がかりではあった。町あかりというその新…

溢れる不安と不満をぶつけていいのは

12月12日、サレンダー橋本 著『恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。』(小学館)を読む。本書はWebメディア『オモコロ』に14年7月から12月まで更新された著者の漫画を初めて単行本化したもの。帯文に“えっ…このマンガ、サブカルをバカにしてる!?許せません!渋…

うんことおしっこは生きる上での基本

12月8日、谷川俊太郎 文 井上洋介 絵 『たべる』(06年 アートン)を読む。“この絵本、食べすぎにききます、ダイエットにもなります”というキャッチの通り井上洋介の生々しい人物描写と谷川俊太郎のえげつなくも可笑しい終末観による正しく“迫力の一冊!”主…

けれどその点は百も承知と思われる

10月13日、茨木のり子 作 山内ふじ江 絵『貝の子プチキュー』(福音館書店)を読む。本書は詩人 茨木のり子が生涯において唯一残した絵本の仕事として知られている。が、もともとは茨木のり子が放送作家時代に書いたラジオドラマの脚本を絵本向きに再構成し…