2018-01-01から1年間の記事一覧

ライブにはそれなりの覚悟を持って

11月26日、岡林信康『森羅十二象』(ディスクユニオン)を聴く。本作は68年に『山谷ブルース』でデビューした岡林信康の50周年記念アルバム。全12曲は過去作のセルフカバーを多彩なゲストと共演したもの。京都フィルハーモニー室内合奏団、坂上幸之助、矢野…

只、一端預かった役者は搾れるだけ搾る

11月16日、鴻上尚史 著『鴻上尚史の俳優入門』(講談社文庫)を読む。本書は劇作家で演出家である著者が中高生向きに俳優という職業についてレクチャーしたもの。高校演劇コンクールの審査員として青森に出向いた著者が帰りの東北新幹線の中でコンクール参加…

それでもアル仙にしか描けないものは

11月7日、『笑いのカイブツ』(秋田書店)を読む。本書は「元伝説のハガキ職人」のツチヤタカユキの私小説を史群アル仙が漫画化したもの。ツチヤには対人恐怖症の傾向がありアル仙にははっきり病名の付いた精神障害がある。この両者をブッキングする制作者…

あれは女優魂というよりガッツである

11月2日、テアトル新宿にて『止められるか、俺たちを』を観る。監督、白石和彌。60年代後半の新宿でフーテン少女から若松プロダクションの助監督となりやがて国内初の女性ピンク映画監督となる筈だった吉積めぐみの23年の生涯を描いた本作。ではあるが演じる…

大人のヒデキを振り向かせたいのは

9月7日、西城秀樹『ゴールデンベストシングルコレクション』(SONY MUSIC)を聴く。本作は72年『恋する季節』でデビューしたヒデキを83年『ギャランドゥ』まで収めた「懐刻盤」。本作のヒデキはデビューから4枚目までの青春歌謡期、『情熱の嵐』か…

本作が刺激になり欲も出てきたのか

8月31日、原作 阿久悠 画 上村一夫『人喰い』(双葉社)を読む。本作は71年1月から4月までWEEKLY漫画アクションに連載されたコミックスを初めて単行本化したもの。70年代初め、「高度経済成長の犠牲となった故郷を棄て人を喰い漁り芸能界の頂点にのぼ…

新たな名門作りに一役買って後に恩を

8月17日、西村賢太 著『夢魔去りぬ』(講談社文庫)を読む。本書は15年に単行本『痴者の食卓』として刊行された短篇小説集を改題し文庫化したもの。新たに表題作となった『夢魔去りぬ』の主人公、北町はテレビ営業にも色気を見せる人気作家。ある番組への出…

といっても映画自体が既に楽屋おち的

8月14日、小林雄次 著『モリのいる場所』(朝日文庫)を読む。本書は5月に公開された沖田修一監督の同名映画のノベライズ。著者は日大芸術学部卒の脚本家で以前にも映画ノベライズを手掛けている。同じ日芸の沖田監督の後輩。映画の録音を担当した山本タカア…

アイドルの国際作家的展開というのは

5月8日、ももいろクローバーZの『第一笑 ヘシャオイーシャオ!〜』を聴く。4人組になったももクロの再出発にあたる本作は『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ〜拉麺大乱〜』の主題歌でもある。そちらに寄せたのか前作シングルに続く日中友好路…

次元を超える作家、阿久悠の始まりの

5月3日、阿久悠 著『昭和と歌謡曲と日本人』(河出書房新社)を読む。本書は07年に逝去した作詞家 阿久悠が01年から07年まで新聞連載していたコラムを集めたもの。亡くなったのは07年8月でありコラムの最終回は7月22日。直前までNHK FMで自身のアンソ…

火木香って黒木香かなと

4月30日、阿部共実 著『月曜日の友達②』を読む。帯文には「マンガ賞総なめ!」「10万部突破!」などの二倍は大きな活字で「糸井重里さん感涙!」とある。学問の世界では30年以上前の出来事から歴史の中にファイルされるとか。若者文化史上の先人を感涙させたら…

サラダといえば芋サラダ世代である私

4月18日、『茨木のり子の献立帳』平凡社 写真=平地勲 を読む。以前にこの場で詩人、茨木のり子が唯一残した児童書『貝の子プチキュー』を児童文学の外側にいた茨木のり子が一回こっきりの冒険に挑んだ意欲作などと私は評した。が、『貝の子プチキュー』は茨…

危険と引き換えに堅気の数倍の収入を

1月26日 、石井光太 著『浮浪児1945−戦争が生んだ子供たち』(新潮文庫) を読む。本書は77年生まれのルポライター、石井光太がこれまで途上国のストリートチルドレンを取材し数々のルポを記した際に日本国内では同じような問題をどう解決してきたのかを疑問に…

こうした節倹精神はデビュー当時から

1月20日、eastern youth 『SONG ento JIYU』(裸足の音楽社)を聴く。昨年これは間違いなしとショップで手に取るも何故か聴き逃していた本作。音楽誌等の年間ベストにはほぼ見かけずもしや残念賞と疑いつつ。イースタンユースにはまだ辛うじて紅白出場叶うほど…

笑わば笑えといった経済事情の中で

1月17日、『円谷プロ特撮ドラマDVDコレクション50号』(ディアゴスティーニ)より『怪奇大作戦 第22話 果てしなき暴走』を観る。脚本、市川森一。『怪奇大作戦』は68年、TBSで放映された“科学を悪用して犯罪をおかす者と正義と科学を守る者との対決を描く怪…

歴史の上では『解体新書』といえば

1月13日、みなもと太郎 著『風雲児たち〜蘭学革命篇』(リイド社)を読む。本書はNHKの正月時代劇として三谷幸喜脚本でドラマ化されたばかり。みなもと太郎による原作漫画は40年近くも連載されている超大作だが。本書は三谷脚本がつまんだ蘭学者、前野良沢と杉…