危険な春なんである

 まず初めに私は当ホームページの主ではない事をお断りしておく。
私は言わばケチな間借人である。居候である。70年代のTVドラマで石立鉄夫が何度も演じていた様な男盛りの働き盛りに今だ万年浪人生ごとき根無し草生活を繰り返すグズ男である。 そんな私にこうして情けをかけてくれた当ホームページの本当の主は街の古本屋であるから石立鉄夫の歴代グズ男キャラに私を例えるならさながら水もれ甲介である。身分違いのマドンナは大原麗子である。私にもこの仕事をきっかけにそんなマドンナが現れて欲しいものだなあと初春らしいたわ言に思いふけるのもいいもんである。
 が、やはり世の中は甘くない物である。私もこの際水もれ甲介の様に心機一転絵本作家として世に出て階下の古本屋の大家をギャフンといわせてやろうかと思ったのだが当の大家の方も天よりそれを期待して私を迎え入れたらしいのである。
 何でも大家のH氏(実際には店長の夫である。以下エイチと呼称)の当面の目標は出版プロデューサーだと言うのだ。街の古本屋から出版プロデューサーへの道程はかなりの物だと思うがエイチは本気である。私とエイチは十五年来の親友なので精々がんばってくれでは済まされないのである。
 つい先日も今後の打ち合わせと称して伊香保温泉一泊二日旅行をエイチにプレゼントされてしまった私である。早速買収である。その後私のアパートに小包が届いた。エイチからである。中味は私が先の旅行の際に読みたいと言ったジョン・レノンが息子ショーンに贈った絵本だった。これを読んでよく勉強して永遠のベストセラーをひとつよろしくという意味だろう。そう簡単に行く訳がないんである。内緒のプレゼントがまだ有った。井川遙の水着トレカ計3枚である。買収の次は抱かせである。
 出版プロデューサーやる気満々なんである。
 そう言えば温泉旅行の帰りがけにもエイチは何だったらお前と一発キメときゃ良かったぜなど私のエゾカモシカ型の尻をデニムパンツの上からなでくり回すのである。この男完全に私のパトロン気取りである。私は非常に不安な心持ちである。危険な春なんである。
 どうすれば良いのだ読者諸兄よ。いいからその古本屋にオカマ掘られとけってくらいの反響が関の山か。広い世間の中にはこんな私の苦境を見るに見かねて救いの手を差し伸べてくれる本物の出版プロデューサーは居ないものか。などと折角面倒を見てくれたエイチを一円も儲けさせないうちから守銭奴呼ばわりしておんぼろコラムは険悪なスタートを切るのである。あんまりである。私は。