それこそおもしろまじめな役者ぶり

11月20日、『赤塚不二夫のギャグ・ポルノ 気分を出してもう一度』(79年 日活)をDVDで観る。監督、山本晋也。本作は漫画家、赤塚不二夫が原案を立てプロデューサーと脚本を兼ねる高平哲郎ともちろん山本晋也監督と関係者一同が飲んで騒いで生まれたパーティー映画。主演の柄本明は当時無名のはずだが82年の『宝島』のインタビューでは「昔は面白かったといわれて腹が立って」とこぼしている。けれど今本作を観返しても怪優、柄本明登場のインパクトが再認識されることはない。「歴史は全部そーゆー風になってるわけですから」と本人が語ったように本作の柄本明の面白さは賞味期限を過ぎている。たこ八郎ベンガル由利徹その他の無責任な客演ぶりもそのルーズさが小気味よく今日的だったことを共感できる世代は限られているし小川亜佐美のクレオパトラ風の髪型が一周回って新鮮な時代に私は立ち会えないと思う。参加した人全員が忘れたつもりのパーティーを今さら振り返っても空しいだけかも知れない。が、発案者の赤塚不二夫だけは責任を持ってふざけている。それこそおもしろまじめな役者ぶり。一応のストーリーは柄本明演じるダメ亭主が小川亜佐美演じる妻と離婚してお互い自由に生きるつもりがたった一日で復縁するまでのドタバタ劇というか。高平哲郎のコントの作風には当時、景山民夫が激怒していたが。由利徹 演じる医者が「オペの用意をしろ」と告げると看護婦が片乳をつかんで「バカ、オッパイじゃねえの」と怒られたりする田舎芝居が許せなかったのだなとそこだけは納得。40年以上たった今もくだらなすぎると心から言える。本作のエンドロールにはクレジットされているタモリがどこに出ているのか繰り返し観ると柄本明が鉄道自殺する場面で別撮りのアップで登場する運転士がどうやらタモリくさい。が、DVDのパッケージにはクレジットされていないので何か事情がありそう。由利徹の衣装がまんま中洲産業大学タモリ教授なので恐らく代役なのだろう。クレジットに由利徹(先輩)とある通り当時の由利徹はとっくに卒業した母校の部活に現れては直接関係ない後輩に頼まれもしない指導をする先輩の様だった。よほど図太くないと引き受けられない仕事ではある。が、本作自体が既に「やりたいことは全部やっちゃった」という赤塚不二夫(役名)なる不惑の漫画家の頼まれてもいない特別講義といった感も。勉強になりましたと諸先輩方に今も心から言えるのは現場では踏んだり蹴ったりのはずだった助監督の滝田洋二郎か。