おまかせ演出こそが見物である

 まだ二十代はじめの頃であったと思う。エピックソニー時代のエレファントカシマシの学園ライヴにエイチと出かけた。ライヴのポスターには「ふわふわ」のシングルジャケ写真がそのまま使用されていたので大体その頃だと思う。宮本浩次は頭にタオルを巻きくわえ煙草で登場してはまた何かボヤき演奏は始まった。始まったが宮本のボーカルが本人の創意工夫からか、わざとバックからテンポをズラし追いつかれては早めたりでもうグシャグシャ。カッコイイとは思ったがその後この試みは禁じ手となったようだ。新宿コマでは再演されなかった。コマでは五木ひろしショーばりに舞台がせり上がったりしてメンバーよりも客のほうが照れてしまい、仕方なく拍手をおくるしかない場面もあった。そうしたズレた演出に対して「これはね、俺らが何も言わねえのがいけねえんだって」と宮本は弁明していた。コマの舞台演出サイドにバンドのカラー的なことをキチンと説明してこのようにどうかひとつと申し出ないから五木ひろしショー同様の演出の下で「星の砂」を演奏するハメになると。今にすればあれはあれで良いステージだったと思うのだが。

 こうしたおまかせ演出の中で私が強烈に覚えているものがある。今から10年以上前だと思う。日曜の昼下がりの普段ならゴルフ中継が入ってそうな日テレのあの時間である。日テレじゃなかったかも知れないけどまああのどうしようもない時間。どこか地方の雪祭りのイベントをそのまま中継していた。出演者は多分田代とか桑まんとか風見慎吾とかその辺の。松本典子がステージ上で「パステルラブ」を歌っていた。当時既にバラエティーのタレントで通っていたのだが、そのステージでは歌手として持ち歌である小ヒット「パステルラブ」を歌っていた。そして多分その時の演出がお祭り実行委員の方々によるおまかせ演出だったのだろう。松本典子のバックには孔雀の羽根を見にまとったこまわり君のような中年女性ダンサー達がモロ乳で踊っていたのである。物凄く違和感のある「パステルラブ」。松本典子は作り笑いで歌い通したがあの後どうなったのだろう。お祭り実行委員の方々と松本サイドはモロ乳ダンサーの件について話し合いの場を持たなかったのか。これっきりで済めばと松本サイドが目をつむったのか。そういうスキを見逃しちゃいないのがお祭り実行委員というものではないだろうか。首都機能移転については思うところ無し。お祭りは好きな人間だけでどうぞ盛り上がって下さい。チェッチェッコリでどうぞ朝まで翌昼まで。