残りヒトケタで突入されるんである

 エイチからいつもの礼状が届いた。どんなに優れたエンタメだって目に見える反響が現われるまでには時間がかかるのだ。そして波は一気に来ると鴻上さんもBSで苦闘の劇団旗上げ時代を振り返って語っていたぞと。何をがんばるかってこのネットコラムのことであろう。

 そこまでは毎度耳タコの号令なのだが、古本屋の実権を握るエイチのカミサンからも文章がそえてある。“グーグル検索に引っかかるのが遅れましたが先月ついにサーチされました。大きな前進です。”との一文の意味が私は半日理解できなかった。ホームページに寄稿はしていてもそれがどのように流動されていくのか何も知らんのである。が、どうやらほんの通りすがりにせよ私の書くものをのぞき見して行った人間もしくは天才猿が、先月末に数名確認できましたよとエイチのカミサンは私に言いたかったのだろう。だからいつまでも一人相撲と腐ってないで志はしっかり持ち続けなさい。大体あたしの身にもなってみ、と言いたかったのだろう。私の小汚い原稿をせっせとホームページに取り上げてくれるのはエイチのカミサンなんである。遊びと思って寝言みたいなこと書き飛ばしてたらバチがあたるし鴻上さんにも会わせる顔がない。

 まだ20才そこそこの頃に私とエイチは揃って第三舞台の新人オーディションに落選したが、その生き恥はNHKに取材されているんである。そう考えるとエイチと一緒に何かやろうとしていい目が出た試しがない。無いのだが今回はカミサンの協力もあれば何より読者様の存在がある。私の読者様?まだヒトケタかなと一応清純派のAVギャルのように股間に両手をはさみ込んで一人照れまくりたいきぶんである。で、そのヒトケタの人々の事情も私は知らされている。

 私が以前に川越美和の近況について書いたものに目を引かれた人々なんである。近況ったって単に出演作の内容と感想をあまり愛情を込めず書いただけのものだった。それでも今現在の川越美和に関する事ならどんな野良情報でも知りたい人々はこの星にヒトケタ存在するということである。残るはいよいよヒトケタなんである。そんな失礼なことを書くとせっかく来訪してくれた川越美和の最後のファンの皆様(といってもヒトケタ)さえも二度と訪ねてくれなくなるとエイチのカミサンもいい加減怒り出すかもしれない。が、私はこれからそのヒトケタの人々の為に精一杯やるつもりである。川越美和を最後まで見捨てない人々に私もできればフォローされたいんである。最低の男だねまったくと呆れてもらって結構。私には私の考えっていうか企みがあるんである。川越美和に関する事なら何でも知りたいヒトケタの人々の中には川越美和の身内もしくはご本人様も含まれるかもしれないって事さとルパン気取りでニタ笑いである。そう考えればヒトケタだって百人力である。心をひとつにしようではないか同志。

 川越美和は今や映画コラムニストでもある。んな事はコアなファンならご存知であろう。多分彼女が今一番興味を持っている邦画は「突入せよ!あさま山荘事件」だと思うのだ。「光の雨」であのような役柄を演じた後では。彼女があの映画の評文を書くかもしくは書くに書けない立場なのかわからないが私が代わって書いてみようと思う。役所広司に国民の敵呼ばわりされた以上こちらだって黙っていられないんである。こちらとはここである。今ここに漂泊した残りヒトケタの赤い目の泣き虫達である。