ダルマと言えばあのダルマ達である

 ダルマボトルを憶えているだろうか。サントリーオールドの話ではない。80年代の前半にふいに市場を占領したと思ったらすぐにきえたあのダルマボトルのソフトドリンク達である。確か初めはコカコーラ、ファンタなどが売り出したはずである。350ミリリットルという育ち盛りには魅力的な内容量と珍妙なシェイプに気を引かれたティーンは当時多かった。ゴミ問題のことを考えると将来的に必ず廃止いなるからと一つ一つコレクションしていた同級生もいた。いまだ保存してあるなら拝ませて欲しいものだ。私が覚えている物ではマリンクラブというメントール系のカラフルな炭酸物。ピナという乳酸系飲料。そして冒険活劇飲料サスケだろうか。サスケもそうだが大方ドクターペッパーをアレンジしたような炭酸物が続々と現われては消えていった記憶がある。やはりその筋ではドクペこそ王道中の王道ですね。ドクペよ永遠なれか何か及び腰にもなるのだが。実際誰がそれほどまでにこよなく愛しつづけてるのかドクペを。ドクペ飲んでますか実際。ご家族のどなたがドクペをよく飲まれてますか。

 フィルムセンターで藤田敏八の「妹」を観た。映画の前半でひし美ゆり子の女子大生が運送屋の林隆三に迫るシーンがある。引越しを頼んで新居に荷物を運ばせた林隆三にひし美は金を払いたくない。良ければ体で払わせて欲しいと迫るシーンのちょっと前。ひし美がサンダルばきで外に出て自販機にコインをいれてまとめ買いするのがドクペなのだ。ジュースでもない、コーラでもないと観る者をなんとなく不安にさせる宣伝文句でデビューした当時のドクペである。ひし美は「これ好きなんだぁ。薬っぽくて」とさも美味しそうにドクペを口元に。が、そのまま一息に飲み干したりはしない。ある意味チラリズムだ。

 しかし「妹」は74年の作品だからドクペも早25年以上飲まれ続けていることになる。愛されて25年。誰かしらに。煙草で言えば「峰」と同ポジションになるのだろうか。実は私はいつか自分で小商いをするならばそうした商品のみを揃えたいと考えている。飲み物はと聞かれればウチはドクペ一本と胸を張る。煙草はと聞かれれば峰しかないと大いばり。米はタイ米。週刊誌は大泉。即席めんはヤクルトラーメン。靴下は10本指の軍足のみ。そういう店をキャンプ場の一角とか救急施設の中に建てるのが夢である。他に頼る店はないが余りにも趣味的にグロテスクな偏りのある店。そんな店の一件も持てたらと今日も修練なのである。逆村上春樹。店がゴール。