意外やキャンクロから幕開けである

 全体何処をどう突っつけば始まるのか見当がつかない80年代回帰ブーム。ネタなら腐るほど抱え込みながらどれが今もナマ素材でどれが再生不可なのか難しいところであろう。当時の空気を吸っている者がこれは今でもウケると思い込んで市場に引っ張り出しても反響は皆無ということもある。最近では仕掛ける側も半分ヤケクソなのだろうか。

 近所のコンビニにて八潮路つとむの「キャンパスクロッキー」の再発コミックを入手した。あのザラ紙の三百円でお釣りがくるやつである。80年代の前半にヤングジャンプに連載していた記憶がある。内容は地方の大学の学生寮に生活する貧乏学生が、日々持て余す食欲と性欲と物欲にのたうち回るエログロ失笑ギャグ漫画。当時ライバル誌のヤングマガジンには「OH!タカラヅカ」という内容の似た作品が連載中であった。が、どっちがどっちの追っかけ企画なのかはわからない。わかりたくもない。昔の大学生ってどうしてこんなに獣欲的でムサ苦しかったのだろう。そういう自分も充分昔の大学生であるが。サークルの怖い先輩からの号令でコンパに女のコを一人最低何人は連れて来いみたいな場面は当事者としてではないが直面した。講義が終わって教室の外に出ると、青い顔した男子学生が数名なだれ込み片っ端から女子学生に声をかけていた。あのようなことは今の大学にもあるのだろうか。多分あまり無いと思われる。あれを文化と呼ぶならそのような文化は童貞連合やイヴちゃんを守る会と共に消滅したのだろう。できればこれからも二度と立ち帰って欲しくないと個人的に思う。しかし私が今あえてキャンクロを手に取ったのは自分への戒めかと思う。己の思春期は「みゆき」の世界でも「めぞん一刻」の世界にもダブらない。そんな甘いものじゃない。キャンクロだろう。「キャンパスクロッキー」な青春だったじゃないか。今も変わり映えなぞしていない。むしろもっとムサ苦しくなってる。「独身アパートどくだみ荘」みたいになってる。そこのところを我が身にしっかり叩き込んでおくべきだと思うのだ。

 で、いったい今時誰が読むのか見当もつかないキャンクロだが私は若いフレッシュマン達にぜひ読んで欲しい。社会人としてもまれ始めた今こそキャンクロを。バッカヤロ俺達がお前達くらいの頃はだなあとエラそうに頭を押さえつける上司達の真の青春像が貴重な資料としてここにある。だからって何だエラそうに手前らの若い頃はキャンクロじゃねえかなどとうっかり反撃しないように。そんなことしたらどくだみ荘行きだよ。まあ私はそこで待ってるけど。