あなたがいれば大丈夫なんである

 根本はるみのガチャ眼は若い時の松坂慶子みたい。肉体派女優路線でガンガン行って欲しい。行ってるね、もう。私ごときが助言するまでもなくね。わかった。しかし根本はるみ深作欣二監督とはニアミスに終わった。いくらその仕事振りに共感しようとも死者とはコンビを組めない。やり残した仕事があるとすればこんなものじゃなかろうかとイメージしつつ自分の仕事をしてみることは可能だが。

 東京国立近代美術館にて「牛腸茂雄展」を観てきた。1946に生まれ83年に病死するまで3冊の写真集を残した写真家である。代表作「SELF AND OTHERS」を一つの劇映画に仕立てた作品が最近公開されたが見損なっていたのだ。その時点では牛腸茂雄(ゴチョウシゲオと読む)が今の私と同じ36歳で亡くなっていたことを知らなかった。何やらスリリングな因果を勝手に感じて。牛腸の世界に今触れると私も長生きできないことになるがそれでも観たいかと。それでも観たいと。覚悟を決めて出かけることにした。が、どうせ死ぬならばと前の晩は二級酒を焼け飲みの根本はるみで焼けずり。全身アッパラパーの半死状態で近代美術館の門をくぐるのも恥ずかしかった。作品も実は記憶にほとんど無い。じゃあレポートするな馬鹿めがと思われるかも知れぬがそれ程怖かったのである私は。

 牛腸茂雄は3歳の頃に胸椎カリエスという病にかかり生死をさまよった。20歳までは生きられないだろうと言われながらも物作りに青春を捧げ桑沢デザイン研究所に学ぶ。そこでグラフィックデザインを専攻するが同校の講師だった写真家・大辻清司に写真の才能を見抜かれ写真の世界へ進む。作風についてここで私が勝手な注釈をするのは気がひけるがひと言で言わせてもらうと此の世の中のあの世だろうか。人物も風景もストレンジなのだ。古本の中にはさまっていた見ず知らずの若いカップルの記念写真に感じる戦慄である。しかし見知らぬカップルの記念写真に総毛立つ自分が根本はるみにピンコ立つのは何故。根本はるみだって見知らぬ他人ではないのか。生つばボディーに痴的なガチャ眼がいかにもそそると言っても勝手にそそっているだけではないか。肉感的でセクシーな若い女達は皆自分のような男にピクンとうずくものと世間の男は考えている。そうしてお前もかよしよしと肉感的でセクシーな若いモデルに持ち金をはたいている。が、現実はその男も若いモデルも見知らぬカップルの記念写真である。今はこんなに輝いていると言ってもいずれは見知らぬ記念写真である。正直言って元気になれるシロモノではない牛腸ワールドだが観て良かったと思う。此の世の中のあの世で見知らぬセクシーアイドル夢想デートするくらいしか能のないでくのぼうは私。それでも未来は変えられる。もがき続けようこれから先も。牛腸で絶望。根本で絶倫。有難いよこれは。