子供に夢を与え再びパクるんである

 ウルトラマンシリーズの着ぐるみを制作しているらしい工房が江戸川橋付近にある。ガラス戸にガイアやコスモスのポスターが貼ってあって中で合皮を切ったり折ったりしている作業が丸見えである。ヒマな人間ならウルトラマンのボディスーツが一着作られる工程を全て見物することができる。しかし実際ウルトラマンに夢中になっている子供達がその場に立ってしまったらいかがなものか。子供の夢一気にブチこわされてしまうのでは。私の子供時代に似たような経験があった。家の近所の米屋にてアイアンキングショーが催されたのだ。いの一番のだしを買ったお客には入場券を1枚配布するシステムを多分いの一番には無許可で行なっていた。いの一番に無許可ならアイアンキングの着ぐるみもどう工面したのか怪しいものであった。当時は主にデパートの屋上などでヒーローショーは子供に人気であった。そうしたオフィシャルなものの他に着ぐるみとレコードくらいしか用意していないもぐりのヒーローショーは多々あったのだろう。

 アイアンキングショーは町内の寺の中庭で行なわれた。ラジオ体操か。で、ショーが終り何週間か後に小学生の私がその米屋の前を通るとガレージの片隅に段ボールが放置してあった。そこからアイアンキングの頭部とシューズがよれっとのぞいていたのである。小学生の私はおののいた。何か見てはいけないものを見てしまった後ろめたさに苦しんだ。今思えばあの着ぐるみは非公式なでっちあげものだったのか。あんなふうにうっちゃっておくということは、安くないレンタル料金を払って借りたものではないということだ。勝手に作っていたのだろうか。もう一度この眼で出来映えを確かめたいものだ。

 子供番組のロケ現場に出くわしてガッカリしたこともある。「ロポット110番」というロボコンの後追い番組だ。家の近所の森林公園で撮影していたのだ。何にガッカリしたかというとロボットの着ぐるみを半分身につけた男優が子役らに演出していた様子にである。テレビではドジで笑われ役の主役ロボの中に入っているのがあのおっかない親父かよというダメージと、いじめ役の子供らが現場では半泣きで芝居をつけられている有り様にもダメージを食らった。これが現実かと。演出家が着ぐるみの中に入っていた点からもいかに苦しい番組作りだったのかが想像できる。「ロボット110番」はやはり不人気のまま終了したのではないか。あの着ぐるみは今どこに保管してあるのか。うっかりするとまたもぐりのショーに。あの男優自らがパクらないとも。あの男優の前職が米屋では。ショックのパー。