十五年振りのあの湿り気である

 本当に大ヒット上映中じゃないか。犬童一心監督作品「ジョゼと虎と魚たち」。貧しき長屋に祖母と二人暮しの車椅子の少女ジョゼとひょんなきっかけからその家に出入りし始めたごく普通の大学生との短きメモリアル。主演の池脇千鶴が文学好きの陰気なメルヘン女王様であるジョゼの役所を実に上手く自分のものにしている。話題のベッドシーンも貧乳かつ乳首ゴツイ文句無しのATG臭マックスただよう横綱相撲で。んもォあたしお星様4つあげちゃう。いやマジで感激したのだ私は。ATGじゃないけどATG。ATGよりATG味とうなづけるこの感覚。

 大森一樹による斉藤由貴の一連の青春映画群が登場し始めたときと同じ感覚である。ああいうの十五年サイクルくらいで若い女性にザクッとアピールしてしまうものなのか。若い女性ファンは根っこの部分ではああした湿り気タップリの暗くストロングな女性像にウットリしてしまうものなのか。勿論そんな出口無しのヒロインにハンサムでお人好しな恋人が支えになってあげている「お話」にキュンとなっているのだろうけれど。もっとドス黒い映画にもできただろうし。ジョゼも恋人役も不細工で根性悪でまるっきり社交性が無く、互いの貞操を互いに人助けじゃないかよと狙い合っているといったような。山田花子原作だっけと思うような「ジョゼと虎と魚たち」も私は観たいのですが。しかし本作はカラリと明るく可愛らしいジョゼ像がポイントであろうか。他に誰のところに話が行ったのかしらん。

 安達祐美とか矢部美穂とか持田真樹とかロリータ系で脱ぎそで脱がない系には一通り持ちかけてたりして。しかしこうなると池脇千鶴以外の誰でもコケただろうと思わせる。そういうものなのである。ヒット作の裏話として実はクランクイン直前まであの役は……といった内容のエピソードは良く聞くが、それも面白かったのにと思える例は皆無。ジョゼ役は池脇の為にあったのです。ということにあいなりました今。できれば大森斉藤コンビのように似たり寄ったりのキャスティングとスケールの小品を毎年作ってもらえないだろうか。大森作品をビデオで観たおして一人で思う存分感傷にふけっとれと?ふけっても良いのだがなるべくならこのひとかけらの純情をあの日シネクイントに集うことができた皆様達と育めたらと。久し振りに可愛い女の子を大勢集めてくれる映画だと感心したもので、つい。いや待てそれはとにもかくにも妻夫木聡が手当たり次第にガンガンやってる映画だからか。それもあると。妻夫木君にお星様3つ。おだまりと。