一年坊主は見たんである

 アダルト業界の人間でもないのにストリップ小屋のことを劇場なんて言うとおかしいかも知れないが。まんまこの間行きつけのストリップ小屋でなどと書けば完全にこれ便所の落書き然としてしまうので許されたし。劇場行ってきたのよ。「セクシャルバイオレッドNO1」にのせて巨尻をグラインドさせパックをパクパクいわす舞姫の下で口をポカンと開けていただろう私。安手のサスペンスの端役である。適役。

 そして生ポラコーナーではいつものごとく差し入れに集まるファンのブラバス臭い熱気で場内はムセ返る。「そう右足ちょい上げ、でのけぞって、そう、そうだ」などと小沼勝ばりのネチっこい演出で舞姫にポーズをつける中高年男性。その後ろで固くなりながら順番を待つ角刈りの大学生。小沼演出を生ツバ飲みつつ見守っていた角刈り君は自分の番が来ると舞姫にうわづった声で頼み込んだ。「さっきの人と一緒で。」そう言われた舞姫は一瞬不思議そうな表情をしたが、こうした商売の女性らしい切り替えの早さでウンわかったと小沼さんを再び舞台に呼び戻したのだ。角刈り君がさっきの人と一緒でと言ったのは、さっきの小沼さんがつけたやらしいポーズを自分にも撮らして下さいという意だったはずである。が、舞姫はこれをさっきのやらしい人と一緒にツーショットした写真が撮りたいのかと誤解したらしい。舞姫は角刈りにカメラを渡しさっさと小沼さんと腕を組んでしまった。腕を組まれて黙ってる小沼さんも小沼さんだ。自分の演出にこの青年はホレたのかとまた小沼さんまで誤解したのか。いやそれは半分正解だが。しばらくすると角刈り君はもじもじしながらも「いやそうじゃなくてさっきと同じポーズで」と真意を打ち明けることに成功した。私はホッと胸をなでおろした。もしも彼がもう一回り器量の小さい男ならば。彼に小沼さんと腕を組まされた所を舞姫に撮られてこれでいいんでしょ全くサイコや郎めがと生ポラを額に生タン付でカーッペと貼り付けられてもヘラヘラ帰ったであろう。そして何も言えなかっただろう。劇場ではよくあることなのだ。普段はおとなしい会社員が泉谷しげるのコンサートでは人が変わったようにオラオラ言わすのと正反対のことが起きる場所なのだ。風俗の待合にも似て基本的には皆小羊である。成人式の若者の百倍素直で紳士的なこの客層が普段は恐らくオラオラ言わしている対象はといえば。自分で集めた近所の浮浪小学生達か。「ロボッ子ビートン」のガキおやじがブラバスの熱気ムンムンの劇場に行きつけはや一年。ピカピカの嫌な一年生。