はじまりさえ歌えりゃマシである

 翼広げ壁を乗り越えいっぱい泣いちゃって下さい的な。そんなバブル全盛的なフレッシュメン向き人生応援歌も最近じゃめっきり耳にしなくなった。なぜ耳にしなくなったかというとそうした楽曲がさっぱり売れなくなったからであろう。売れなくなったから人生応援歌も歌ってらんないという事はアレか。そもそも金目当てで見知らぬ他人の肩叩きまくるようにしてあのような前向き、でも泣いてもいいんだよ調の人生応援歌をきゃつらは歌っていたのか。逆に言えばお金を払ってでもそんなチャチ気た文句に背中を押して欲しかった十余年前のフレッシュメン達もようよう観念したと。

 話はそれるかそれぬか知らんが去年の三月に公開された「blue」を私は未見である。が、シナリオと予告編は目を通していて何となく今私が言いたげなことと重なる部分を見つけた。地方の女子高生仲良し四人組のうち一人が酒の席で知り合った妻子持ちの男に騙されて妊娠してしまい云々の暗黒青春ドラマの悪役であるその男。が、どんな男かというとアズティック・カメラの魅力をその女子高生に教えた元ネオアコ青年で、現在は郷里で会社勤めをし妻子を持ちそして今回捕まったのが風な切り込み。あの当時の連中今何やってるかっつったらその程度なんだからといった気持ちわかるけど誰にぶつけても始まらない憤り。

 そんなのも中年真っ盛りの今チラチラしてて結局ノリきれません尾崎豊第一次リバイバル波。やはり昔の無頼派作家みたいに動いてるところ見たよなどというだけでその発言者込みで伝説扱いされる時代が来るのか。家の前ふらふら歩いてたよ。裸だったなんつったらもう。ジェネレーション・リーダーと呼べる人が今の時代いなくなりましたよか何か古本屋かロック喫茶の親父になれてりゃごちてみたい。それも無理そうなので結局買って毎朝聴いてます。オーノキヨフミ「平凡」。今のところもうすぐトップテン的な位置であちこちで流れているこの曲をはじめ私は桑田佳祐の覆面バンドかと間違えた。新人にしてはこなれ過ぎてて。埼玉のサザン、大事MANブラザースを向う十年モデルチェンジ繰り返すとこんな風になるのか。大事MANがロックか否かについてはどうでも良くなかった20代後半の私だったが。オーノキヨフミがロックか否かについてはさっぱりした気持ちでどうでも良い。80年代のラブコメドラマを夢想させるような甘酸っぱい楽曲に勝手にしびれた私だが今現在のオーノ支持層も結構中年揃いではないのか。何となくキャンディポップな氷川きよし化が早くもはじまりかけているような。