夜より暗い真昼の怪電波である

 銀座シネパトスにて〜ピンクの巨匠の原点を探る〜完全なる若松孝二第一弾にあたる「情事の履歴書」を観る。65年の国映作品である。主演女優は千草みどり、寺島幹夫以下今では得体の知れぬ当時のマイナー俳優達。こうした旧作ではそうした見た事も無いいぶし銀の熱演振りが面白くてクセになるのだ。そして本物のデモ行進と作り物ながら超リアルな女郎部屋。騙されて田舎から売られてきた少女がやがて町工場の社長の愛人となり手に入れた「何てデラックスな」公営アパート。巨大イカのようなガス湯沸し器はやはりパロマだろうか。ガス器具とかガスライターのTVCFが当時よく流れていたのを覚えている。それに家具。高層ビルの上から下まで全て家具を扱った家具センタービルが乱立したまま今も点々と残っている。残っているその街は時代にとり残されたマイナーリーグな街です。この一角なら今も60年代の若松ワールド再現できるんじゃなかろかと呆れてしまうようなそうした街に実際住んでいる訳で私も。わざわざ劇場に足を運ぶ必要も無いのかも知れない。「情事の履歴書」は当時雪の中を主演女優が全裸で走るシーンがマスコミの話題をさらったとか。街中を全裸の女子学生が走り回って大騒動に云々といったニュースは当時よく耳にした気がする。いわゆるハプニング。ストリーキングであったか。
 欧米諸国のストリーキングブームは今や止めようもない盛り上がりでしてといった海外ニュースをお昼のニュースで映像つきで流していた記憶が私にはある。私はその局はNTVだったと推測する。どこの家も昼の時間にどのチャンネルに合わせておくかはその家々の掟のごとく守られていたあの時代。「お昼のワイドショー」を観ている家庭にたまたま遊びにきていた人間(の子ども)が家人に無言で「ベルトクイズQ&Q」にチャンネルを変えてしまった時の冷たい空気を思い出して欲しい。私の家ではあの当時はもっぱらNTVだった。「お昼のワイドショー」では一般の家庭の主婦へ若き日の思い出に一流カメラマンの手によってヌードのセルフポートレートを撮影して美しく仕上げる極めて真面目なコーナーがあった。が、当時あのような企画に今のアラーキーの人妻ヌードのごとく応募が殺到してしたとは考えにくいのである。やらせやサギに近い工作はあったのではないか。「情事の履歴書」と大差無いドロドロの舞台裏があのコーナーにはあったのではないか。そっちのが「女の事件」ではないだろうか。で、なんだって司会陣皆もれなく政界入りできたかって話。