サンパウロ発仲見世行きである

 1月21日、浅草ヨーロー堂にて南かなこ4th Single「かなこの浜っ娘ソーラン」発売記念ライブに闖入す。
 一階のレジにてCDを買うと整理券を手渡され二階のイベント会場に案内される。小学校の教室くらいのフロアにパイプ椅子が50脚ほど並べてある。ステージには銭湯の壁画のごとくペンキ描きの富士山が。ステージ袖の小さなくぼみに音響ブースがありミキサーが座っている。そのミキサーが立ち上がりマイクを握ると司会進行になり客席に下りて入場客をさばくとヨーロー堂店長になる。店長の紹介のあとで南かなこ登場。「居酒屋サンバ」をニコニコとサンバダンスをくねくね踊りつつ歌う。50代、60代の男性客中心の会場は大喜び。「私がマイクを向けたらサンバ、サンバと大きな声でお願いします」と客席をねり歩き始めるかなこ。マイクを向けられた観客は皆少年のように無邪気に「サンバ!サンバ!」と叫ぶではないか。私一人で空気を悪くするわけにはいかない。大きな声でサンバ、サンバを半分覚悟していたがそのうちに曲は終わって内心ホッとした。イベントに足を運ぶくらいのファンのくせに随分な縮みぶりだと思われるかも知れぬ。が、私が彼女を知ったのは三日前なのだ。
 明け方近くにつけっぱなしになっていたラジオから偶然耳にした「かなこの浜っ娘ソーラン」が始まりだった。万年床の中でぼんやりと聴くハァードッコイショォ!ドッコイショォー!という張りのある掛け声に激しく欲情してしまった。少年時代に女性演歌歌手がコブシをコロコロいわす姿に大人の男がニタリとするのを見てそれが官能と結びついてることは気づいていた。が、自分もそのイヤラシサを体で理解できる年代に充分入っていたとは。しかも新たな官能の扉を開けてくれた南かなこは81年生まれの23歳、ブラジルはサンパウロ出身の「南の国の天然娘」である。天然娘の容姿をヨーロー堂の店頭のポスターを見るまで私は知らなかった。声の色気のみに引き寄せられてのこのこやって来てしまったのだ。
 当日の天然娘の衣装はジャケ写と同じ黒の股引きド派手な原色合わせのはっぴに鉢巻という祭姿。わかる年代にはわかり過ぎるエロスタイリングと対照的に本人はあっけらかんとしている。尚更鼻息は荒くなるというもの。サイン色紙をお土産に配りながら一人一人と握手する南かなこ。私の番だ。握ってもらったその手のやわらかいこと。松井直美似のルックスにややボルテージが下がった所へ再び大欲情。演歌でチンピクって小林よしのりじゃないんだからと笑ってる全ての三十男よ。可哀相なのはお主。