安らかに寝惚け続けたいんである

 11月21日、正午近くにムクムク起床。枕元のDVDプレーヤーを操作すると画面がモノクロになっている。昨晩泥酔い状態でアダルト物のディスクを観ながらリモコン機能をあれこれ試しているうちにこうなってしまった。いい加減見飽きた画面の中の痴態をワイプさせたりコマ送りさせたりしたが、こんなことも長屋住まいの生活の知恵と呼べようか。
 昔々「野々村病院物語」というドラマの中で、津川雅彦演じるちょいとヤクザで助平な中年医師が、デスクにふんぞり返ってエロ写真をハサミで切り抜いているシーンがあった。退屈しのぎにそんなことをしている津川雅彦が、当時少年だった私には不気味で仕方なかったが。私も最早そうした不気味な中年男の仲間入りを果たしてしまったのだろう。無念といえば無念。苦汁といえば苦汁。フルチンといえばフルチン。とにもかくにも買ったばかりの激安DVDプレーヤーが半分オシャカに。
 しかしモノクロで観る助平画像というのもなかなか味わい深いような。そういえば一人暮らしを始めた頃は、隣人からもらい受けた14型の白黒テレビを観ていたものだ。モノクロ画面で観た「チャーム・ミントタイム」の堀江しのぶと井丸ゆかりの肢体は今も覚えている。ハングリーだったと言える。あのドン欲な若さを思い出せという啓示なのか。モノクロで充分。パンツの穴世代っすわと。
 んなこと考えつつ冬物のコートとジャンパーを近所のランドリーに出す。マキムラ様、千三百六十四円ナリ。別にこのランドリーの受付の女性に本名を明かす必要はないのでは。山田村ですとかデイビーですとか国際グループですとか毎回好きなように遊んでも悪いことをしている訳でもないのに。何やら自分がちっぽけな存在に感ず。
 そのままトボトボと捨てられた子犬のごとく神保町までひた歩く。行きつけの中華レストランにもぐり込み、豚角煮ライスを食べる。エディ藩似のマスターにエディ藩に似てますねーとは一度も言ったことがない。もしも親族関係にあれば問題ないが他人の空似だったら大変失礼だと思うからだ。中国籍で実家が中華料理店を営む男の顔は皆同じエディ顔かと思っているのかと怒られそうだからだ。そういう訳では。岩松了さんにも似てますね。エディ世代のマスターが80年代から活躍し始めた劇作家に詳しいとは思いにくい。
 やはり今日も無言で無言ながらもなじみの店を出る。北の丸公園で西日を浴びるベンチでヌボーッと。まるでモヌケのカラの日常の原因を私は何処にも探し当てようと思わない。人生の映写事故?いや人生は映写事故では。