アングラ育ちの小学生だったんである

3月9日、杉並アニメーションミュージアムにて名作シリーズ「タイムボカン」を観る。タツノコプロ作品の中でも最もギャグの濃い、最もふざけきった名作中の名作である。この杉並アニメーションミュージアムでは二月末から一日二本ずつ「タイムボカン」をDVD上映している。今日はシリーズ第5話「原始人はやさしいペッチャ!」と第6話「海賊はオウムが好きだペッチャ」の二本。 
 タイトル曲だけでなく、作品全体のコンセプトもサディスティック・ミカ・バンドの代表曲「タイムマシンにお願い」からのいただきかと気づいたのは大人になってからである。他にもそんな風に作り手の狙いが今頃になって読める場面が多々あるのではと思ったが。これが今観ても面白過ぎて単純に楽しめてしまった。まずキャラクターがいずれも大人向きだということ。子供や小動物や豆ロボットは登場するがそれらは大人の気にさわらない性質に脚色されている。少年少女も登場するがそこはかとなく色気づいているしこちらもやはり大人の眼から見たとてもいい子達だ。
 そして悪役を演ずる毒婦、怪力男、マッドサイエンティストらもギャグアニメという枠組みを差っ引いてもまだ過剰なくらい笑いというものに真摯で懸命だ。東京乾電池シティーボーイズの舞台を思わせるものがあるような。70年代後半のアングラ演劇の視点は「タイムボカン」の中にもあると思う。で、それを当時最後の最後までふざけきったことに今更ながら拍手を送りたいのだ。 子供向け番組でヘソ出しボンデージスーツ姿の毒婦がキセル煙草をプカプカやりながら子分どもをイビりまくりその子分もセクシーな年増女にイビられるのが決して嫌いじゃないという構図。その構図をよくぞ見せてくれたと思う。
 子供に悪影響あったかなかったか?現在の自分と向き合って判断すればそれはあったと思う。「タイムボカン」シリーズの影響で科学の道に進んだ学者なぞいる訳がない。マージョ様に今も憧れ続けてSMクラブの店長になった人物がいたならそれは決して良い影響とは言えないだろう。が、それがなんだと言いたい。ストーリー展開上必要なメカがその場の思いつき丸出しで次々と登場する。スカポンタン、ヨイヨイサーなどの定番ギャグが意味不明なままに飛び交う。ビュンビュンチュワチュワってなんだ。富山敬までがなんだ。
 しかしワルノリのためのワルノリの反則ドラマは子供心ばかりか大人になった私の心までも30分間わしづかみにして離さなかった。ミカバンド同様国産ニューウェーブの原点だ「タイムボカン」。満足すわ。