無益な休日にゲテディナー定食である

 5月17日、ラピュタ阿佐ヶ谷のモーニングショー「岩下志麻スペシャル」の最終作、『心中天綱島』(69年表現社=ATG)を観る。朝の10時半から映画館につめかける人がいるのか知らん、と思えば結構います。阿佐ヶ谷ならではか。
 街全体がまだバリバリの高度経済成長中、日本列島まだ改造中といった感で。映画には小松方正が出ていた。岩下志麻演じる遊女・小春を金力で手玉に取る助平商人の役である。前日に渋谷シネマヴェーラで観た、根岸吉太郎の『朝はダメよ!』にも小松方正は出ていた。鹿沼えり演じるプレイ派OLを、金力で手玉に取る助平社長の役である。
 こういうキャラクターで売ってきた役者というのは、普段から金力に弱い女性らにモテていたのだろうか。小松方正の場合、何となく金持ちの助平親父といったイメージを友好利用していたように思える。『朝はダメよ!』で音楽を担当する三枝成彰は、以前11PMの司会の中で、ディスコに行くと女のコを探しに来たと騒がれるのが気分悪くて…とこぼしていたが。
 これから徐々に「あの助平親父」と呼ばれる機会が増えるはずの私の世代。どちらかといえば小松方正のように開き直れる方が幸せなのではないか。金力もないのに開き直っても仕方ないのだが。小松方正ねぇ、などと映画の本筋とはあまり関係のないことを考えつつラピュタを出るとまだ正午過ぎだ。
 荻窪方面へとぼとぼ歩き出す。本当に昭和四十年代の邦画にしか残ってないはずの掘っ建て商店や安下宿、モダーン建築なコーポが今も建ち並び人々が生活している。この変な活気は嫌いじゃない。住みたいとは思わないが中央線沿線。面白いけどそれだけ物騒だし。あっ、刺殺事件の警察広告。昭和だまったく。
 荻窪よってこやにて、春野菜ののったラーメンにタバスコをかけて、とろろ飯と一緒にかっ込む。この程度の描写で気持ち悪がっている人には、私が自宅でどんな物を食べているかお話しない方が良いでしょうな。ツナマヨキムチ玉子納豆を始め、どこに何をブチまけるか自分でもわからんのですよ。私はこのことだけでも生涯の伴侶などといったものは半分あきらめている。その伴侶が私を上回るゲテモノ食いなら問題ないと思うか。ツナマヨキムチ玉子納豆に森永チョコボールとヨッちゃんの酢漬けイカをトッピングしてあつあつご飯を何杯もかっ込む女。私はヘドが出る。そういうものだ。
 その後はまた杉並アニメーションミュージアムで『タイムボカン』を観たが、こちらは観客は私一人。ヒロインの淳子ちゃんが岩下志麻に、悪役グロッキーが大泉晃に似ている無益な発見あり。