ロックがオモシロックないんである

 神保町のタクトにてついに入手してしまった『やさぐれ歌謡最前線 みなしごのブルース』。70年代東映映画周辺の不良性感度濃厚な女優、歌手、企画物グループらの楽曲を余すところなく集めた強力盤。私の目当ては17曲目に収録されたガールズの『パンキー・ハイスクール・ラブ』である。
 77年の10月にリリースされたこの曲をセコハンショップで釣り上げる日をどんなに夢見てきたことか。結局その夢はかなわずこうしてありがたいコンピに身をゆだねているのだが。この『パンキー・ハイスクール・ラブ』の音源一切を私は所持していなかったのである。ラジオからエアチェックしたテープを持っていてビニール盤を探しあぐねているのでもなし。当時たった一度だけフジテレビ「スターどっきり秘報告」にて放映された時の刷り込み一発でガールズに夢中になりその後もビニール盤を探し続けて早三十年にもなりかけてきた次第。
 で、ハッキリ言うとそれほど感電しなかったというか。多分その後で探求しだした本家ランナウェイズのアレンジの格好良さをたった一度だけ聴いたあの日のガールズに勝手にダブらせていたらしいのだ。そこが男の浅はかさというか。学校や職場に憎からぬ仲の婦女子ができつつあるとしてその女子に似てるっちゃ似てるAV女優を知ると知らぬととでは生活の張りが違うという男子のメカニズムというか。そして今回『パンキー・ハイスクール・ラブ』はそうした男子の浅はかな夢をここに来てひねり潰してくれました。
 が、後続のシングル『LOVE JACK』は素晴らしかった。作曲、編曲は柳田ヒロ。解説にある通りこのバンドには「色んな人たちの様々な思惑がもの凄い勢いで交錯しているのが見た瞬間にわかる」のだが私個人的には柳田ヒロがやりたいようにやったガールズをもっと聴きたいと思ったが。ちゃんと演奏のできるギャルバンというのがまず珍しかった当時であればこそのカオス的産物かと。そういえばバブル期にデビューしたギャルバンの多くはいかにも芸能プロ出身の売りそこないのアイドルの寄せ集めだったような。ロージーロキシー・ローラーなんてどうだったのか知らん。
 ちゃんと演奏力があってルックスも良くても何やら食い足りない気もする昨今のギャルバン界。女だからってなめるんじゃないよ的なやさぐれ志向が充分売りになったあの時代のディレクターの方が幸せだったのか知ら。シングル『野良猫』のジャケ写の中のやさぐれきれてない森の小動物的な奥野敦子のまなざしに貴殿は何を感ずるか。カ、カワイイと。イリアは最高だね。