失われている内が宴である

 8月6日、池袋西武イルムス館にて古本まつりをチラリのぞく。「本日最終日」の閉館1時間前位か。お客の入りはまずまず。古本市は初日の開場後数時間が勝負時で後はめぼしいネタは全て売りつくされた状態と考えてよいとか。さほど古本マニアでもないしそれもよいかと。スカスカの古本まつりを見届けることにして。
 『猿の軍団』のビデオが二千五百円か。神保町にあるマニアの巣である中古ビデオの店にも『猿の軍団』はほぼそろっていてそちらは一本六百円だった。別に中古物のプレミアのいい加減さについて今さらゴチるつもりもないが。『猿の軍団』は小松左京もいっちょがみの本格SFドラマとして80年代、90年代と駆るとカルト視され続けてきた。その頃制作されたビデオが今ではもうだぶつき始めているのか。中古業界で言う「リフレクション化」か。
 そんな用語は今勝手に作ったし意味を説明するのも億劫なのだが。とにかく皆もう飽きちゃったのだな『猿の軍団』。などと思いつつグラビア雑誌コーナーで『写真時代』をあさったり。毎月必ず入手していたはずのその時期の雑誌でもこれは初めて見たとおののく号に出逢う時のあのどよめきを久々に感ず。この感覚って一体。
 一つはちゃんと買って読んだがまったく内容を忘れているとか。150ページ足らずの月刊誌のスミからスミまでを20年の月日が完全に洗い流してしまったとか。もう一つは毎月必ず入手していたはずのその時期のたまたまそのひと月に何かタダゴトではない問題を抱えていてとても書店でエロ本を手に取る気にはなれなかったとか。こっちの方が現実味があるが。何があったのか知らその頃に。
 それが何であるかのヒントも実は購入エラーしたらしいその幻の一号の中に隠れているとか。そう思うと五百二十五円で私の「失われた週末」をゲットしてみたくもなったが。この場合よその古書店で同じ号が千円だったりすると私個人としては嬉しいのか悲しいのか。またよその店で店頭ワゴンに百円で放り込まれていたとしたら。今の所どちらとも言えない気分だが「失われた週末」の発見は私的に拾得。まだ拾っていないが拾得かと。
 などと思いつつ調子付いて80年代の『平凡パンチ』までニタニタあさり続けている内にグラビアアイドル時代の甲斐智枝美に再び向かい合ってしまって。我ながら何やってんだ俺ァと鼻水の一つもすすったのが閉館十五分前。チェミィの表紙のパンチは無論買わず『猿の軍団』も『写真時代』も結局買わず古本まつり会場から遁走。何だかんだ言って思春期から向う二十年「失われた週末」かと。