大根の花は今も珍味らしいのである

12月23日、早稲田松竹にて『戦場のメリークリスマス』を初めてスクリーンでちゃんと観る。「前から一度観ようと思ってたんだけどテーマ曲しか知らなくて」とロビーで語っていたカップルの男性は20代半ば位か?その世代にはもうそんな感じのスタンダードなのかしら戦メリも。ゴッドファーザーのテーマ曲のメロディのクラクション鳴らしつつ爆走してた80年代の暴走族を思い出したり。
ところで当の私は戦メリ公開時には高校二年生だったか。自分のお小遣いで自分が観たいと思った映画を一人で劇場に観に行くことを始めた時期。その記念すべき一本が線メリであればよかったのかもしれないがその記念すべき一本の映画は私にとって『だいじょうぶマイフレンド』であった。赤裸々にも告白するが。当時の線メリフィーバーの中には首を突っ込んではいた。宝島のインタビューを読みあさりテレ朝の特番を観たり教授のサウンドストリートもチェックしたし。
その頃教授のサンストに村上龍がゲストに出演して『戦メリ』と『だいじょうぶマイフレンド』の興行争いについて主役同士がフレンドリーに呑気な対談をしていたのだ。それで『だいじょうぶマイフレンド』も『戦メリ』の次に重要な作品でありここを通過するかしないかでその後の人生大違いと思春期の私は判断したのだと思う。
限られた遊興費(嗚呼、今も限られている)の中でここを逃せばもう出逢えそうもない体験を優先させる。若者らしく当時はそう考えて後に二番館、三番館にはずり込みそうもない重要な作品であるはずの『だいじょうぶマイフレンド』を観たのだと思う。歴史的大失敗作として後に語り継がれる『だいじょうぶマイフレンド』が私の映画体験のふりだしとは納得するしか。
では『戦メリ』の方は実際どんなんかなと思って改めて観たが。これが今改めて観てもちょっと入り込めない時代の空気のある映画かと。教授のメイクアップは同時は違和感なかったが今はある。トム・コンティ以外のほとんどの役者が堂々たる大根振りなのも今は呆然としてしまう。が、当時は逆に大根組がトム・コンティやボウイの演技をクサイとけなしていたような。何もしないっちゅかできない有り様がナチュラルで際立つようなキャッチで手ぶらの若手俳優を売り出す方法も今は昔かと。
江角マキコさんみたいな女優さんになりたいですなどと発言する新人アイドル女優達の頭の中にある女優とか演技って何か別の物だきっと。と、今回『戦メリ』を観直して思ったことと同じことを割と最近に思わせたのは『ゾルゲ』か知ら。