処女飛行ゆえに見守りたいんである

 5月24日、ラピュタ阿佐ヶ谷にてモーニングショー< 加賀まりこ> 『月曜日のユカ』(64年日活)を観る。家主のエイチから稿料と一緒に送られてくる袖の下がここのところなぜか中平康の関連書籍つづきなのだ。表紙はいずれも『月曜日のユカ』の加賀まりこである。
中平作品と一口に言ってもその作風は一筋縄にはくくれない多様振りなのだが私個人は『牛乳屋フランキー』も『光る海』も『ザ・スパイダースの大進撃』も『変奏曲』も好きな作品である。『狂った果実』と『月曜日のユカ』は未見でありあまり観たいとも思っていなかった。石原裕次郎加賀まりこがあまり好きな映画スターじゃないのだ。シンデレラボーイ、シンデレラガール型のスターが好きじゃないような。水の江滝子が偶然見つけてすぐさま撮影中の映画の一場面にチョイ役で出演させたのをきっかけに有名になった石原裕次郎のデビュー秘話とかまだ女学生だった加賀まりこを脚本家時代の寺山修司がスカウトした話だとかが信じられるかどうかよりあまり好きじゃないような。
あまり好きじゃないといえば加賀まりこ自身も本作をあまり好きじゃないようなことを関連書籍の中のインタビューで語っている。明るく優しくチャーミングな横浜のナイトクラブの売れっ娘ユカの自由な性愛振りを大胆に演じきる可愛い爆弾、加賀まりこ。この路線は本作の他には大島渚の『悦楽』でもチラリとのぞかせるが加賀まりこのキャリアの中ではごく初期だけのものかと。女優加賀まりこパイロット版といった感か。『旅の重さ』に出演していた秋吉久美子を思い出したり。あの映画ではほぼ主役に決まっていた秋吉久美子をオーディション会場に現れた高橋洋子の存在感が完全に食ってしまい秋吉久美子は脇役に移ったなどとこれも何だかあまり好きになれない油っこいおとぎ話。だが、『旅の重さ』の秋吉久美子ははかなげで良い。パイロット版のはかなき魅力がある。
 『月曜日のユカ』の加賀まりこも同様に良い。本人も訳がわからぬまま劇映画の世界に引きずり込まれて演技のマネゴトをさせられているがこれがいつまで続くものかはさせられる側にもさせる側にもまったく読めぬ様。当時としては相当なことを人前で堂々とやってのけてはいるのだが。別に明日からはまたただの不良少女に逆戻りでもそんなものでしょうといったあっけらかん振りが『月曜日のユカ』のキャラクターには見事にフィットしている。もし本作でスクリーンから加賀まりこが消えていたとしたら。もしそうなっていたら私の加賀まりこ熱は今ごろ天井知らずかとまた勝手なことを。