色気もソッ気も利権がらみである

10月18日、シネカノン有楽町2丁目にて『サディスティック・ミカ・バンド』を観る。伝説のバンドの35年間を駆け抜ける!と『ぴあ』の作品紹介にあったが本当に駆け抜けているというか。貴重な当時の映像資料がテンコ盛りとは確かに宣伝文句には一言も発してはいない。が、これほど昔の映像抜きのライブドキュメントに仕上がっているとは思わなんだ。
そもそも当時の映像が残っていないのかしらと思えばそうでもない。加藤和彦のインタビューシーンでロンドン公演の話になった時に当時キリンビールが現地に進出した際にバンドがイメージキャラクターに起用されていたCMがほんの一瞬だけ登場する。それもほんの一瞬。もしかしたらサディスティック・ミカ・バンドの70年代の映像資料全般が今ではアンタッチャブルなのかとも思った。
木村カエラを迎えた再結成コンサートの実況とメンバーそれぞれが当時を振り返った語りだけでほぼ構成された本作のタイトルが『サディスティック・ミカ・バンド』であるのもそうした事情への照れのようにも思えたり。そもそも今回の再結成が発表された時の加藤和彦のコメントが「外堀から埋められちゃった感じで」などとあまりテンション高くなかった。外堀から埋められちゃったというのは自身が賛同しなければこの話はポシャッてしまうという事態か。いわゆる再結成バンドにありがちな経済面でもうジリ貧にあるメンバーがいて実はその為のエイドだったりといった事情もあるのかと。
いずれにしても当時のミカバンドの権利を今も持っている人物と別の流れで慎重に製作せざるを得ない本作であったのかと。そのことがチラチラしてはっきり言って少し後味のよろしくない作品なのだが。木村カエラの意外な優等生ぶりというかショーガールぶりに気付かされた。何となく後味のよろしくない奥歯に物のはさまった感のなくもない本作のクライマックスが『タイムマシンにおねがい』に歴代歌姫のそれぞれのパフォーマンスをつなぎ合わせるといった演出があるはずもない。
色々あって大蔵ざらえなドキュメントにはできなかったのだなということは終盤まで観ていればどうしたって痛感させられる。仕方がないからカエラでフィニッシュといくかと考えるのは懐古趣味の中年層だけであってそんなカエラが気の毒かとも。木村カエラのファンは今回の再結成ミカバンドにどのくらい関心を持ったのだろう。ツアーではなく一夜限りのライブのみというのが唯一エロティックな演出かと。